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KDE 4.8 Review

高い機能性と統一された操作感、そして洗練された外観。

KDE 4.8 はバージョン最終章に近付いているだけあって安定性にも高い信頼が置ける。Linux Mint の台頭以降、ユーザー数が増加した Gnome 3, Cinnamon ばかりが話題になるが KDE 4 はその両者よりも圧倒的に使いやすい。

KDE 4 のデビューと批判、そして現在の比類なき完成度

KDE 3 にて圧倒的なシェアを誇っていた KDE だが意図的に「開発者向け」としてリリースされた KDE 4.0 はマスコミばかりでなく、エンドユーザーからも激しい不評を買った。一般向けのリリースではない開発版が、なぜ痛烈な批判の対象となったのか?それは、開発段階ながら「新しい KDE」はエンドユーザーを激しく惹きつける話題であり、大規模なユーザー数を抱えた Distro 群がこぞって KDE 4.0 を「正式リリース」扱いで公開したからだ。「なんでもいいから、早く新しい KDE を見せてくれ!」という熱狂が生んだ悲劇と言える。詳しくは KDE 4のリリースは何が問題であったのか? – SourceForge.JP Magazine : オープンソースの話題満載 を読んでみて欲しい。僕自身の感覚では KDE 4 は Version 4.4 まで日常使用に耐えないほど不安定だった。その当時 openSUSE ユーザーだった僕は、苦虫を噛み潰しながらも Ubuntu へ移行している(それから Gentoo/Xfce という安住の地を得て現在に至る)。そんな僕みたいなユーザーも Ubuntu つまり Gnome のシェアを伸ばした要因になっているに違いない。そして、あれから数年…バージョンを重ねた KDE 4 は熟成され、比類なきパフォーマンスと完成度を持つに至っていた。永年の苦心があったからこそ到達出来た領域。僕は KDE の逆襲を予感している!

KDE の魅力

僕は Gentoo の VirtualBox に導入している Ubuntu 12.04 Daily Build にてリリース直後の KDE 4.8 を試した。KDE はやはり現行デスクトップの最高峰。初めて Linux を使う人も KDE の完成度と美しさにはびっくりするはずだ。KDE 4 は革新的な進化を遂げながらも、従来通りのスタンダードな使い勝手を決して放棄することはない。

KDE 4.8 on Ubuntu 12 Daily Build
KDE 4.8 on Ubuntu 12 Daily Build

最も優れたファイルマネージャ Dolphin

あらゆるプラットフォームのファイルマネージャにおいて Dolphin を超えるものはないと思う。窓分割は当然として Bookmarks 及び Tree ペインの同時表示、さらにボトムに Terminal 表示が可能。Explorer の Show in Group(グループ表示)や PSD のサムネイル表示にまで対応している。ffmpegthumbs の追加によって、ほとんどの種類の動画サムネイルも表示可能だ。そして関連付けの変更まで手軽に行える。まさに完璧。かつては Finder のコラム表示にも対応していた(低需要のためか今回の 4.8 で削除。僕は気に入っていたんだが…)。Dolphin は KDE 環境がなければ動作しない。逆を言えば Dolphin は KDE 環境へと引っ越すための大きな理由に成り得る。

慣れれば最高に使い勝手の良い Amarok

音楽プレイヤー Amarok はプレイリスト型の再生方式なので、楽曲をダブルクリックしただけでは再生がされない。再生するには、アルバムや曲をピックアップして、プレイリストに突っ込む必要がある。しかし、このひと手間さえ我慢すれば現行の音楽プレイヤーでは最上級。Web からの情報表示も Rhythmbox, Banshee より断然早く、アルバム情報もかなり正確に取得してくれる。Linux で音楽を聴くなら、僕には Quod Libet と Amarok の二択しかない。

Widgets と柔軟なデスクトップ配置

KDE 4 の Plasma Desktop はデスクトップに配置するものすべてを Widget として扱うことが出来る。ショートカットアイコンも Widget 化されるので自由に伸縮・配置が可能。初期状態ではフォルダの中身を表示する Widget がデスクトップに配置されている。僕は Widgets の必要性をまるで感じない方だが KDE には天気予報などの定番だけでなく Twitter クライアントや RSS リーダーもあるので面白い。デスクトップには通常のアイコンを置くことも可能で、通常アイコンの場合は垂直配置の左置き、右置き、どちらも設定出来る。水平配置も可能。これは非常に気に入っている。僕が知る限り、アイコンを右置き固定可能なのは KDE だけだ。

優れたデザインの Oxygen テーマ

外観の格好良さは不変。KDE の洗練された UI デザインは Gnome 系にも見習って欲しいところ。KDE は大人向けかつシックなので、商用利用にも向いていると思う。

公式 Ubuntu 派生への KDE 4.8 インストール方法

KDE 4.8 が利用出来るのは公式の Ubuntu 派生。それと Arch Linux でも横流し的に最速リリースされているが不安定だ。Ubuntu 派生における KDE の日常利用は推奨しない。理由はこちら「KDE 4 移行のすすめ」を参照のこと。Ubuntu, Arch Linux はやっぱり Gnome 勢向け。KDE を常用するなら、例えば openSUSE, Chakra など KDE に特化したドイツ産の Distro でのリリースを待つのが賢い。なので、時間がかかるが、僕が推奨する定番「仮想 OS で試して、気に入ったら Distro 移行を視野に入れた本格導入」という流れが良いだろう。Ubuntu 系の KDE 4.8 導入詳細はこちら:How to Install KDE SC 4.8 on Ubuntu 11.10 – Softpedia

sudo add-apt-repository ppa:kubuntu-ppa/backports
sudo apt-get update && sudo apt-get install kubuntu-desktop

Gnome 系との外観統一について

GTK 系と Qt 系には UI テーマの互換性がないため、今までは Qt-GTK Engine というツール利用しての対応がなされていた。しかし GTK 3 における大幅な仕様変更で、これが対応しなくなった。Gentoo ではかなり早期に対応済みだが Ubuntu 派生と Arch Linux では未対応。これら Gnome 勢である Distro の場合は手動で ~/config.gtk-3.0/settings.ini を作成すれば回避出来る。単純な問題ではあるが…横流しリリースの是非が問われるところ。

Nepomuk によるデスクトップ検索

KDE 4 では Windows Search に似た機能を持つ Nepomuk によるデスクトップ検索が行える。メールの内容から Office 文書の中身まで検索するやつだ。また、アプリケーション側が Nepomuk に対応していれば、ネットワーク上のパソコンも検索対象に出来る。ただし Ubuntu 派生の KDE は諸事情によりメンテが行き届いておらず Nepomuk も他の Distro と違い2バイト文字の表示・検索が出来ないという致命的なバグを抱えた状態でリリースされてしまっている。

未だベータ版としての実装

Nepomuk は公式にベータ版として実装されている(2バイト文字問題は Ubuntu 系だけのバグ)。完成は KDE 5 を待つことになりそうだ。KDE 4 においてデスクトップ検索を実行するには Nepomuk, Strigi, Soprano のパッケージが必須となる。Nepomuk が検索機構そのもので Strigi は内容検索の箇所を受け持つようだ。Soprano というのは Strigi 用のライブラリ。困ったことに Nepomuk と Strigi は同時に開始されない。Nepomuk はバックグランドで自動開始されるが Strigi は手動でサービス追加を行う必要がある。

メール内容検索

非 KDE ソフトである Thunderbird, Opera のメール本文は検索結果に現れない。Thunderbird はサポートされているのだが、僕の環境では動作しなかった。もちろん KMail であれば問題なく検索結果にリストされるので Nepomuk を活用するなら、現状は KDE 謹製の Kontact 利用が望まれる。

Semantic Desktop という構想

アプリケーションは大抵独自のファイル形式を持っていて、互換性がない場合がほとんど。例えば .mp3 に付ける ID3 Tag(音楽タグ)は .mp4 には付けられない。こうしたファイル形式の違いを吸収し、すべてのデータ Matrix と成り得る機構を持ったデスクトップを Semantic Desktop と言うらしい。壮大な構想だ。KDE 4 も Semantic Desktop を意識した作りになっている。これが完璧になれば、気が遠くなるようなタグ付け作業から開放されるのだろうか。

Kontact と Akonadi

KDE 4 における僕の唯一の不満がこれ。Kontact は Thunderbird + Lightning や Evolution, Outlook Express と同様の機能を持っているのだが、内部機能はそれぞれ独立したソフトウェアになっている。Kontact は、そもそも個別に開発されていたソフトウェア群をまとめ上げ擬似的に単体ソフトウェア化しものなのだ。メーラー、アドレス帳、カレンダーそれぞれ個別に設定する必要があるし Kontact 自体にまで設定項目がある。もはや、どこから手を付ければ良いのかさっぱりわからない。Gmail の設定もすべて手動だし、スターや未読といったボタンもない。

押し付けがましい Akonadi

プロファイル設定のためには Akonadi というまた別のソフトを使わなきゃいけない。この Akonadi というのが厄介なのだ。Kontact 利用の有無に関わらず自動起動し Semantic 化する場合においては削除不能、なんとも押し付けがましい。Akonadi と Nepomuk についてネット検索すると、かなりの勢いで削除方法についての質問がヒットする。

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