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殺手的童話

殺し屋のお伽話。

題名通り、殺し屋という漆黒と相反する真っ白な恋が描き出されており、その儚い最期に涙がこぼれる。なにより心象描写が素晴らしい。「殺し屋同士の恋愛」と書くと、少女漫画的な世界を想像されるかも知れないが、この作品に夢見がちな妄想はない。むしろ現実的な暴力描写に恐怖を覚える。恋愛模様の美しさとの懸隔で、なおさら衝撃的な Scene が生み出されている。静と動、美と醜 Contrast の効いた演出が見事!

陳靜儀《殺手的童話》1994 - 日版VHS

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  • 導演/監製:陳靜儀
  • 編劇:卓冰
  • 攝影:范銓鑫
  • 配樂:黃英華
  • 歌曲
    主題曲:孫耀威〈情願一個人
    插曲:孫耀威〈全心全意〉
  • 領銜主演
    劉德華 … 高守
    袁詠儀 … 如楓
    伍詠薇 … Ice
    鄭浩南 … 王昌
    李子雄 … 董輝
  • 主演
    葉玉萍 … 女刑事フイ
    蘇永康 … 眼鏡の刑事
    鄧兆尊 … 情報屋マー
    方平 … 徐家誠
  • 客串:程東 … 任務に失敗した殺し屋
  • 出品:百世紀國際娛樂香港
  • 日期:1994年08月05日
  • 片長:93分
  • 日本版
    キリング&ロマンス 狂気の愛
    Taki Corporation 1995年05月05日 VHS
  • English title: A Taste of Killing and Romance

長編電視劇で一年かけて盛り込む要素を約90分に凝縮

陳靜儀《殺手的童話》1994 - 寰宇 DVD
陳靜儀《殺手的童話》1994 – 寰宇 DVD

監督及び監製の陳靜儀は電視劇の脚本家として多大な実績を誇り、2015年現在も現役活動中。本作が唯一の電影監督作だ。銃撃戦、爽やかな恋愛、裏切りと復讐、笑いと狂気…緩急のある展開と Sex & Violence といった長編電視劇で一年かけて盛り込むような要素が約90分の尺に凝縮されている。それでいて無理がないのは、短期製作かつ短期編集が求められる TV 出身者ならではの圧密化の技術に依るものだと感じる。

劇情片の範疇に置かれる作品であるかと思うが、中盤までは喜劇的要素が多く、辛気臭さは皆無。Hollywood 的な過剰な深刻さや、大言壮語もなくて良い。あらゆる類型の作品に対応出来る華仔が主演だけに、動作もふんだんに盛り込まれており、爽快感もある。

人気、知名度ともに高い作品であり、香港電影愛好者なら一度は、香港原版の Poster などを見たことがあるかと思う。Visual は物語の終局における一場面。銃弾の嵐の中で、傷ついた『如楓』を抱きしめる『高守』という構図である。大型 Poster を部屋に飾りたいほど格好良い!

反英雄

華仔袁詠儀が主人公として、しっかりと確立されている。アクの強い登場人物ばかりの「濃い」物語だが、演出・脚本が一貫しており、ブレがない。そのため、主人公たちに感情移入出来る。それに華仔が殺し屋を演じるというのも、かなり珍しい。他に思い付くのは7年後の《全職殺手》くらいか。

『高守』は、いわば「反英雄」の主役だ。あの華仔が要人暗殺のため引金を引く、衝撃の幕開け…そして袁詠儀!可愛いらしいのは当然として、育ちの良いお嬢様風の袁詠儀に非常に似合う、豪奢な衣装が実に良い。『如楓』のお洒落に要注目。さり気なく登場して『Ice』の色気に翻弄され死んでいく、客串の程東も色々な意味で衝撃的。

發狂的殺手王昌

葉偉民《BadBoy 特攻》2000
葉偉民《BadBoy 特攻》2000

いつもながら強烈な個性を発揮する鄭浩南。『高守』のライバルと言える、狂気の殺し屋『王昌』を演じており、この男が登場する度に緊迫感が高まる。Ice とともにSex & Violence を体現する危険人物である。Ice への歪んだ愛、それは『高守』の純愛と対極に位置する。同じ殺し屋でも「陰と陽」と言うべき両者の対立が、物語に激しい起伏を生む。

ところで、日本版 VHS は「狂気の愛」と謳っているが、よもや『王昌』を主役と捉えたのではあるまいな?とかく日本販社は奇想天外である。

華仔と鄭浩南は、3年後の《龍在江湖》で再共演している。こちらの作品で、鄭浩南は上半身裸に有刺鉄線を巻き付けられた上に、辣椒醬をぶっかけられるという BJW 流 Death Match な仕打ちを受けていた。とかく、何をやっても衝撃を残す名優である!

彼のファンなら《BadBoy 特攻》での『板本太郎』役は見逃してはいけない。舒淇を溺愛し、うんざりするほどの失敗 Clone を生み出してしまった「坂本ではない板本」氏の、まったく新しい日本語にも要注目。

葉玉萍・李子雄

Alfred Hitchcock - Psycho (1960)
Alfred Hitchcock "Psycho" 1960

女刑事『フイ』を演じる葉玉萍も強い存在感がある登場人物。しばらくは、がさつで男のような女性を演じているのだが、中盤の衣装替えで、かなりの美人であることが判明。それまで女性らしを一切見せなかっただけに、なおさら魅力的に見える。

陳靜儀監督は、女性を引き立たせるのが上手い!また『フイ』には Alfred Hitchcock の Psycho の有名な場面への Homage が見える。

李子雄は『高守』を追い詰める刑事役。社会的立場からすれば善の側だが、劇中ではやはり悪役の扱いとなる。電影デビュー作かつ定番的名作《英雄本色》の『譚成』役の影響が強いようで、李子雄が完全な善人を演じることは稀だ。

情願一個人

主題歌・挿入歌は華仔ではなく、孫耀威による。孫耀威のアイドル的人気もあり《情願一個人》が当時かなりの流行曲となっていたようだ。これまた名曲。2015年現在の孫耀威は香港を代表する実力派である。

期待感を煽られた作品だけに思い入れあり!

2015年4月末、人生初の香港観光において iSQUARE 内 HMV にて $10 で本作の「正規版」VCD を入手した。興味を引く題名も然り、ずっと気になっていた作品だったので VCD を発見した時は、かなり嬉しかった。

Sharp VC-H220
Sharp VC-H220

ただ、作品鑑賞については二の足を踏んでいた。日本版 VHS の存在を知ったからだ。そして、中古 VHS Deck が思いの外、低価格で流通していることを知り、2015年8月に Sharp VC-H220 を¥3,300で購入。

再び VHS のみで Release された作品の鑑賞が可能となると、すかさず本作の日本版 VHS を Amazon JP にて¥1で入手。長い溜め期間があった分「待ちに待った!」という気持ちで見た作品。

日本版 VHS の状態

残念なのは粵語版ではなく、國語版であること。音声吹き替えなので、とりわけ華仔の声に激しい違和感。最悪なのは日本語字幕。物語の進行とそぐわない文句や、日本語として明らかにおかしい表現が散見され、かなりの確率で内容が誤解されていると思われる。

そして VHS cover に本編と無関係な内容を掲載するのはおかしい。原典 Poster などを流用せず、あえて独自 Cover を用意する奇行にも呆れ果てるが…しかし、全面的に華仔を打ち出した選択だけは褒めてあげたい。

この Taki Corporation という日本販社は、基本的に中国版ないし台湾版の権利を所有していた様子。僕が所持している当該販社の香港電影 VHS は、すべて國語版である。

そして「伝説」という単語に固執し、作品題をむやみと「〜伝説」と改竄してしまう。なんとも奇妙な疾患を抱えた販社である…ともあれ、日本語字幕で物語概要が把握出来るだけでも素晴らしいことだ。

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