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天羅地網

どうやら戦争映画と思われるが、なんだかさっぱりわからない。

見て面白くも、つまらなくもない。駄作かと言えばそうでもなく、佳作かと問われれば、違うとしか答えようがない。なお、作品題であり劇中にも登場する「天羅地網」は中国の故事成語。天にも地にも網があり、逃げ出すことは出来ない。転じて「悪事は必ず裁かれる」という意味である。

《天羅地網》日版DVD

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わからなくても気にならないが。

舞台背景は、1926年の「国民党の北伐」のようだ。主人公一派は「国民政府」の兵隊だと思われる。電視劇の王、鄭少秋が演じる『于庭』は、共産党の司令官であろう。内戦終了後『于庭』はヤクザものとなり、梁家輝が演じる主人公『丁君壁』は警察官になった。ヤクザになった『于庭』は、捜査に来た警察と対決し『丁君壁』の上司を殺害する。

このシーンの繋ぎがデタラメな上に、殺される側の顔がまったく映っていないので、誰が殺されたのか、さっぱりわからない。『于庭』が元司令官だったということも、後に「台詞で説明されるまで」気が付かなかった。

ちなみに編集は、最佳剪接を何度も獲獎している胡大為。二人いる撮影師のひとりは、なんと劉偉強である…これはもう監督の演出の問題。

狙っては出来ない演出。

主人公『丁君壁』の娘、年端も行かぬ少女『媽媽』が、父を守って銃を取る衝撃の決着場面。ここまでの82分間を飛ばしたとしても、ここだけ見れば作品内容は概ね把握出来る。

  1. 射撃の直前にカットが切り替わり『于庭』が「射撃の的」のように硬直。
  2. 撃鉄が下りていない拳銃から発砲されると Slow motion で仰け反る。
  3. 『于庭』は口を閉じままだが、時差を置いて「う゛ーあ゛ぅ」と低い唸り声が被る。
《天羅地網》鄭少秋・槍殺
《天羅地網》鄭少秋・復活

當心!秋官的腹筋力

一発目の銃弾を受け『于庭』は、ヤクザとしての人生の目的を思い出す。二発目を受けると、今度は軍人時代を思い出す。いわば、走馬灯の「二段階右折」だ。雑多に色々と思い出した『于庭』は、なかなか死なない。いや、死ぬ訳にはいかないのだ。

  1. 背筋で起き上がりこぼし復活。
  2. トドメの一撃を喰らう。
  3. 死ぬ即劇終。

李美鳳を目当てに見たのだが。

得したのは、李美鳳の胸を一瞬でも揉むことが出来た黃錦江だけではないだろうか。僕がこの役なら20回は NG を出したい。とにかく李美鳳の衣装が少ない。映し方も劇中の扱いも悪く、何一つ魅力を引き出せていない。しかも死ぬ役。吳家麗の色気が救い。とは言え、女優陣の演技は文句なく素晴らしかった。『媽媽』を演じた、何靈靈は《吉星拱照》で、黃坤玄少年の彼女役を演じていた童星。現在何をやっているかまでは知らん。

天羅地網
〈電眼美人〉李美鳳

主役となる男性俳優陣も実力派が揃っていたが、何をやっていたかは良く思い出せない。強烈な個性を持った名優の個性すら掻き消す、爆風のような演出。残されたのは「空虚」のみ…またしても電影工作室。90s の徐克絡みは、充分に作品を選んで見るべし。週末「やっと映画見られるぞ!」と意気揚々で蓋を開けると「こんなんやった。」では洒落にならん。

梁家輝
最佳男主角を10度以上も獲獎した大俳優なのだが…
李子雄
英雄本色》で有名、以降は似た役が増える。《整蠱專家》に關之琳の婚約者役で出演していた。地味だが、演技派で個性のある俳優。
鄭浩南
先日見た《龍在江湖》の劇中で、上半身裸に有刺鉄線を巻き付けられ、辣椒醤(香港のチリソース)をぶっかけられていた。BJW なデスマッチファイター。大島由加里の元旦那という偽情報が流布された。
胡大為
最佳剪接を何度も獲獎している。本作の編集は何かの気紛れであろう。演者としては、この四人の中では最も個性的で面白い。
徐錦江
「良い人なのか、悪い人なのか」「主人公陣の一角なのか、端役なのか」すら終盤までわからなかった。

80s 後半の戦争映画は記憶から消えやすい?

Tempi di guerra - German DVD
Umberto Lenzi "Tempi di guerra" 1987

「見終えた直後から記憶になくなる」のは 80s 後半の戦争映画の特徴かも知れない。1987年の Umberto Lenzi 監督による戦争映画 Tempi di guerra(日本VHS題:地獄のウォータイム)や、やはり1987年の Jesús Franco 監督 Commando Mengele もそうだ。

それにしても、こんな Cinema Italiano 隆盛末期の戦争映画でも DVD 化される時代になったか… Tempi di guerra のドイツ版ジャケが異常に格好良い。Peter Hooten が大俳優に見えてくる魔法、さすがドイツだ。この作品も、どんな内容であったか、まったく記憶にない。Lenzi ファンの僕でも、見返すのは…ちょっと。DVD 買うか?と聞かれても、それは…という「高難度」作品。

日本には「難しい」と聞くと反応する人が多いので、この作品の DVD を買う人が出てくるかも知れない。そして「あんなの簡単だよ!」とか言う。いや創作物ってそういう価値観を当てはめるものじゃないから。大概、皮肉を理解してくれる人すらいない。

余談だが、僕の所持している Commando Mengele の VHS は仏版。L’ange de la mort の題で、変名 A.M.Frank の表記。IMDb の情報は誤り。これは Jesús Franco 監督作!

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