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捕風漢子

歌曲的電影。

不倫関係にある男女の内面が歌曲と溶け合い、叙情的に描き出される。《旺角卡門》より一足早く林憶蓮の《激情》を Feature しており、電視劇に実績を持つ賴建國導演が、黑幫電影の枠内で可能な限り芸術性を高めた名作。題名は譚詠麟の Marie Anne 粵語版とほとんど同じ。

《捕風漢子》DVD
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激情

林憶蓮《憶蓮》
林憶蓮《憶蓮》1987

「興業収益と自己表現」を秤にかけるなら、賴建國は自己表現に傾いている導演だ。Camera Works も極めて前衛的。Stylish な画が続く。星爺を取っ掛かりに本作に興味を持ったなら、是非とも、賴建國導演の豊かな感性溢れる演出、そして珍しく「完璧な二枚目」を演じる萬梓良李美鳳の名演に注目していもらいたい。

賴建國は、華仔黃韻玲など大物歌手の Music Video も監督しており、歌曲に対しても敏感なはず。本作の題名は譚詠麟が Cover した Marie Anne の粵語題とほとんど同じだ。むしろ、こちらの歌を思い起こす人が多いだろう。

この物語の核は萬梓良が演じる主人公『高亦鳴』と、李美鳳が演じる『程暉』の恋愛劇にある。『高亦鳴』は刑事であり、成奎安が演じる強盗犯を追う展開となる。しかし、こうした黑幫電影的な要素は「装飾」に過ぎない。

時に、恋愛は強盗犯よりも凶暴だ。抑えきれぬ感情に流され不倫に走った『高亦鳴』だが、結局は「届かぬ愛」という現実に打ちのめされる。ここぞ!という場面で、林憶蓮の《激情》が絶妙のタイミングで流れ「苦味」が溢れるのだ。この「激情」こそが物語の主題となっている。

林憶蓮による Top Gun 挿入歌 Take my breath away の粵語 Cover《激情》は1986年 Top Gun の香港公開に際し、原曲を差し替える形で使用された。專輯《憶蓮》に収録されている。《旺角卡門》の挿入歌として有名だが、実は公開は《捕風漢子》の方が数カ月先である。

電眼美人

李美鳳 1987香港小姐競選引用:美魔女大混戰 電眼李美鳳狙擊羅霖 | 蘋果日報

李美鳳が演じる『程暉』は、若干15歳で結婚。何不自由なく暮らすが、平凡な生活への倦怠と、ロボット工学に没頭する夫に孤独を感じている。夫はそんな気配を察することもなく、ひたすらロボットに夢中である。信じられぬアホである。

『程暉』夫婦が不在のある晩、邸宅に二人組の強盗が侵入した。独身の刑事『高亦鳴』は強盗を追跡中、邸宅内にて一枚の写真を発見する。写真の女性『程暉』に一目惚れした『高亦鳴』は写真を懐に入れる。

そして、現場から回収された「日記」を盗み読み『程暉』の内面生活を知ると、彼女の尾行を開始。部下の『阿星』を利用して『程暉』をデートに誘い出し、恋愛は成就に向かうのだが…

盲目的な恋とはいえ、これは職権乱用から Stalking にまで至る、完全な犯罪である。その行為が許されるはずはない。この男の恋は所詮、手を伸ばせば壊れてしまう「蜃気楼」だったのだ。

流れる歌のように「激情」に溺れ、何もかも失った『高亦鳴』は自嘲するしかなかった。『程暉』もまた、割り切れない感情を残したまま。これは心に刺さる…強く感情移入してしまう名場面だ。

美魔女和國茶實業

「電眼美人」の愛称を持つ、李美鳳。15歳でカナダ移住、トレント大学経済学部在学中に家庭教師の仕事も務め、大学卒業後帰国。24歳時の1987年「香港小姐競選」に参加、準優勝となり芸能界入りする。なお、優勝者は楊寶玲であった。僕は李美鳳に一票。

李美鳳は、作曲家である林敏驄と離婚後、台灣の「國茶實業」の社長である富豪、鄭翔中と再婚。現在は同社の美容と減肥を促進するお茶の宣伝モデルも務めている。2015年現在は、52歳となり「美魔女」の代名詞的存在として話題になっている。恐るべきことに「年をまったくとっていない」のだ!國茶實業のお茶…なのか!?

日本版で視聴可能な李美鳳出演作

DVD 化されている作品は三作。本作と《畫中仙》は容易に視聴可能、手頃な価格で購入出来る。とりわけ後者は Happy The Best レーベルからの発売なので完璧だ。《天羅地網》もまだ入手できる。《再戰江湖》は Amazon でまだ買えるかも知れない。なお《江湖情》は比較的品薄のようだ。VHS のみの作品はいずれも希少。《師姐大晒》が Cynthia Rothrock 完全主演作なので要注目!僕は未見だが、原版ないし米国版で DVD が入手可能。

Format Year 原題 邦題
DVD 1988 捕風漢子 血と報復の掟
DVD 1988 天羅地網 ガンメン 狼たちのバラッド
DVD 1988 畫中仙 画中仙 ジョイ・ウォンのゴースト・ラブ・ストーリー
VHS 1989 師姐大晒 香港レディ・レポーター
VHS 1990 再戰江湖 アンディ・ラウ 武闘派列伝
VHS 1995 狂野生死戀 愛よりもはやく撃て

没有玩笑

本作での「真剣な」萬梓良を見た後に、王晶作品を見ると、彼のインパクトがさらに強くなる、という相乗効果もある。むしろ堅気の男を演じる方が希少で、やたらと Edgy な変人役こそ萬梓良の真骨頂というのが僕の印象。おすすめは《賭城大亨Ⅱ之至尊無敵》だ。萬梓良は、周星馳が新人時代から懇意にしている、偉大な俳優なのである。この人の奇天烈さを見れば、星爺との仲もわかる気がする。

萬梓良《賭城大亨Ⅱ之至尊無敵》
王晶《賭城大亨Ⅱ之至尊無敵》1992

萬梓良と言えば「放送禁止ギャグ」をやる危険な男という印象が強いのだが、実は真剣な黑幫電影にも主演作を幾つか持っている。例えば1986年《兄弟》は名作。本作でも、彼の持つ渋みが遺憾なく発揮されており「実力派俳優」としての面を再確認させてくれる。なお、本作の内地版 VCD の表紙で涙を落としているのは、本作には出演していない李修賢である。恐らく、この《兄弟》から拝借した写真。

周星馳與成奎安

《整蠱專家》海報
王晶《整蠱專家》1991

有望新人の時期の星爺は、黑幫電影流行の真っ只中ということもあり、若い刑事を演じることが多い。役名は概ね『阿星』そのままである。役どころは『高亦鳴』の部下、若手刑事である。

役の系統としては《龍在天涯》と同じ。水面をジタバタと泳ぐ、玩具のカエルが『阿星』の未来を暗示する… Giallo を連想させる、きめ細かい演出で、成奎安に殺される、絞殺だったような記憶。この復讐が《整蠱專家》の冒頭に繋がる…と想像すると笑えてくる。

冒頭では、同僚にマクドのポテトを差し入れる場面があり「こんな世界的 Super Star が、僕らのように Junk food を食べている!」と妙に親近感が湧いた。もちろん、それくらい食べるだろうが…この当時の星爺は26歳の若手、現在を鑑みると意外な場面が続出している。

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Kazu Spara in 25 May 2017
Kazu Spara