Heijastin

Le frisson des vampires

闇の世界を望む者。

強い思い入れがある、僕に「映画の素晴らしさ」を教えてくれた原点。Jean Rollin のデビュー2作目、通算3本目の長編映画であり、1969年の前作 La vampire nue より平易な形で、詩的叙情の描き出しに成功している。

Le frisson des vampires

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  • Réalisation / Producteur: Jean Rollin
  • Scénario
    Jean Rollin
    Monique Nathan
  • Photographie: Jean-Jacques Renon
  • Musique: Acanthus
  • Distribution
    Sandra Julien … Ise
    Dominique … Isolde
    Michel Delahaye … Hermann
    Jacques Robiolles … William
    Marie-Pierre Castel … La servante blonde
    Jean-Marie Durand … Antoine
    Kuelan Herce … La servante asiatique
    Nicole Nancel … Isabelle
  • Anée / Durée: 1971 / 95 minutes
  • Production
    Les Films ABC
    Les Films Modernes

Hippie vampires

Jean Rollin
Jean Rollin

本作が世界的な意味で Rollin の最も Popular と言える作品となった理由には、Bram Stoker に習った「古典的な吸血鬼物語の図式」を用いた点が挙げられる。監督自身も『ある意味でのパロディ』と言っているが、しかし Jean Rollin 三大要素である「ディエップの海」「双子の少女」「女吸血鬼」を付与し、なおかつ脚本を完全なオリジナルとした為、図式こそ古典的な Stoker 流だが、まったく独立した「前衛作品」として完成している。

前作 La vampire nue で新人類の指導者役を演じた Michel Delahaye と、同作に Non-credit ながら新人類の群集の一人として出演した Jacques Robiolles が、主人公 Ise(イーズ)の伯父である「ブルジョワ吸血鬼」として出演。異常な個性を発揮しており、他の Rollin 作品とは一風異なる世界を築き上げた。

2人の奇怪なヒッピースタイルは彼らのアイデアによるものが大きく、アクセサリーを自前で付け足したりと非常に熱心であったようだ。その台詞回しも90%が即興であったというから凄い。常時において Libre な監督の姿勢が、役者の強烈な個性を引き出すのだ。なお、即興の「吸血鬼一族の起源」の解説は余りに長かった為、監督本人が適度にカットしている。また、この2人の怪優は François Truffaut の作品で端役をやっていることがある。Truffaut が退屈でも「Jean Rollin 的角度」から見れば楽しめるだろう。

また、次作 Réquiem pour un vampire(IMDb に掲載されているのは告知ポスター用の題名)にも登場している Dominique が放浪の吸血鬼 Isolde 役を怪演。主演の Sandra Julien をはじめとする女優陣が、作品世界の極めて重要な構成要素となっていることを忘れてはならない。

Jean Rollin 三大要素

La vampire
女吸血鬼:主人は絶対的に女性。従僕には男性もいる。
Les jumelles
双子の少女:Marie-Pierre Castel & Catherine Castel(カステル姉妹)に代表される。他の女優の組み合わせでも双子の設定になる Rollin のこだわり。
La plage Pouville-les-Dieppe
ディエップの海岸:始まりと終焉を象徴する地に選ばれる。

Dominique et Sandra Julien

Le frisson des vampires
La précieuse photo retrouvée dans Movies 2000 à Paris.

Paris Movies 2000 で入手した写真、宝物だ。なお、僕は Paris 在住時に Correctorror レーベルから発売された Jean Rollin 作品は全タイトルを買い揃えた。日本円だと各¥700程度。

こと Rollin 作品は、すべて Paris で見ている。この完璧と言える状態のフィルムが収録された名シリーズで Rollin 作品を見ているので(僕は一応、仏語国際資格も持っているので内容把握は問題ないはず!)他社製品版がどのような状態なのか、ほとんど知らない。その内の二本は Carrefour で購入しており、レジのおばちゃんに「こんな映画見てたらアホになるよ!」と叱られた思い出がある。

日活ロマンポルノ

主演の Sandra Julien は、日活ロマンポルノにおいて、1971年「現代ポルノ伝 先天性淫婦」1972年「徳川セックス禁止令 色情大名」に出演している。日本でも有名な女優と言えるだろう。僕は邦画には、さしたる関心がないのだが、宮内洋(風見志郎を演じる以前)との貴重な共演作「現代ポルノ伝 先天性淫婦」だけは見ざるを得なかった。ただし Sandra Julien は本国 France においてはポルノ女優の扱いではない。

逆に Brigitte Lahaie(ブリジット・ラエ ※日本で誰かが流布したカタカナ表記はデタラメなので注意)は 70年代の France を代表するポルノ女優であり、1979年の Fascination(幻惑)1980年の La nuit des traquées(狩られし者達の夜)での主演や Jesús Franco 監督作 Faceless への出演で、日本でもポピュラーになった女優だ。Rollin 作品で本格映画デビュー、脱ポルノに成功する。

Les jumelles

Marie-Pierre Castel
Marie-Pierre Castel
Catherine Castel
Catherine Castel

大好きな Marie-Pierre Castel(マリー・ピエール・カステル)もポルノ女優。70年代の Rollin 作品の常連として、双子の妹 Catherine(カテリンヌ・カステル)と共に吸血鬼の僕役で異彩を放っている。2人の同時出演作としては

  • 1969: La vampire nue(裸の吸血鬼)
  • 1975: Lèvres de sang(血の唇)
  • 1975: Phantasme(妄想)

の3作があり、いずれも Rollin 監督。なお Lèvres de sang に関しては、米国市場向けの Suck me vampire (Suce moi vampire) という別バージョンが存在しており Producer の「強制」によって、本作と無関係な Claudie Beccarie による成人向けシーンの挿入がなされたという。

Mike Genttle(マイク・ジェントル)というあからさまな変名で Credit されたこちらは完全ポルノ指定。今となっては、どこでどうやれば見ることが出来るのかわからないが…米国にはこちら「だけ」を見た人が存在しているだろう。無念である。他にも Jean Rollin は食い扶持として数本のポルノを撮っている。若き日の監督は苦労の連続であったようだ…

身を焼き尽くす太陽の炎

Le frisson des vampires - Acanthus
La bandes sonores par Acanthus

本作の結末は完全なる悪の勝利。Dieppe の海岸にて吸血鬼の伯父たち(闇の世界) と恋人 Antoine (現実世界) の選択を迫られた Ise が選んだのは伯父たちだった。その瞬間に炸裂する Acanthus の Psyché-Rock そして、太陽に焼かれ悶え苦しむ Ise と伯父達。Antoine の "Ise!" という悲痛な叫びが、強烈に耳に突き刺さる。「現実より夢想に生きようとした者への罰」として、その身を焼かれるのだ。

その光景は、ひいては Jean Rollin という一人の芸術家の生き様の反映である。吸血鬼への傾倒、人とは異なる感性を持ったが為に、後ろ指を刺されてきた監督自身を象徴している。この最終局面こそ、監督の主張を最も端的に表現しているのだ。

本作は、経済効果のために粗製濫造された「米国商品」ではない。「France の芸術作品」であることを感じ取っていただければ幸いである。

日本では未公開

本作を初めて見るなら、絶対に仏原版で見て欲しい。例え言葉がわからなくても、本作は言葉だけですべてを説明するような凡作ではない。映像と音楽だけでも充分に「感覚」が伝わってくるはずだ。

確認したところ、日本で視聴可能な字幕付き「米国版」では、販社が、この空前の名場面に「テロ行為」を行っている。全編に渡りカットされているシーン多数、劇伴の差し替えといった凶行など…完全に作品を破壊している。

もしも、米国版でしかこの作品を見ていないなら、それは「Le frisson des vampire を見ていない」に等しい。つまり日本では未公開ということだ。

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