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Conquest

日本版 VHS に同梱された Il maestro への怨みの手記。

Conquest 日本版 VHS なかなか貴重な一本だ。問題は、同梱されている解説小冊子。なんのことはない米国雑誌からパチったコピペ作文だ。しかし、その内容は異常なまでの Dolby Sound 礼賛と巨匠への怨念に満ちていた。一体何が、この筆者をここまで追い詰めたのか?なぜ Lucio Fulci を憎むのか?

Conquest

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  • Regia: Lucio Fulci
  • Soggetto
    Storia: Giovanni Di Clemente
    Screenplay: Gino Capone / José Antonio de la Loma / Carlos Vasallo
  • Fotografia: Alejandro Ulloa
  • Musica: Claudio Simonetti
  • Produttore: Giovanni Di Clemente
  • Interpreti
    Jorge Rivero … Mace
    Sabrina Siani … Ocron
    Andrea Occhipinti … Ilias
    Conrado San Martín … Zora
    José Gras … Fado
  • Anno / Durata: 1983 / 88 minuti
  • Produzione
    Clemi Cinematografica
    Golden Sun
    Producciones Esme S.A.
  • 邦題:SFコンクエスト 魔界の制圧

摩訶不思議コンクエスト

2000年12月31日、年末の渋谷をぶらつく私が¥500で手に入れたのもの。それは Pony Canyon から発売された、あの伝説の名作の日本版 VHS だった。表紙には「SFコンクエスト 魔界の制圧」と記載されている。

また、あの不思議な生き物たちに会いたい…その一心で財布の紐を解くと、その VHS の傍らには Ray Lovelock が "Murderock" の名のもとに私を見つめていた。

もう一度 Dancing そして Death その執念で2本の Lucio Fulci 日本版 VHS を抱きかかえ家路へ歩を早めると、ふと携帯電話が鳴った。

「Lucio と Fulci の Video Collection が出るんだよ。」

私は思わず叫んだ。「Demonia はどっちに入ってるんだ!?」

「入ってないよ。」

その答えを聞いて心で Liza, come back. Zombi 3 は入っていると知り、これでやっと覇王 Bruno Mattei が極東の地でも報われた…と思うのだった。

自宅にて

Conquest との再会を果たした私が Package を開けるとびっくり。当時の「解説小冊子」が丁寧に同封されていたのだ。しかし真に驚くべきは、そこに記された内容である。Dolby Sound 礼賛という奇癖、そして妄執と言えるほどの「巨匠への怨念」である。

コンクエスト解説抜粋

イタリア映画界のスプラッター監督がルチオ・フルチだ。「ゾンビ」が大ヒットした影響を受けて、2番煎じの好きなイタリア人がフルチを使って撮らせたのが「サンゲリア」である。その「サンゲリア」のヒットを受けて製作されたのが日本未公開の「地獄の門」である。これは、アメリカ映画界でもヒットを飛ばし、バラエティ紙のトップ50に約1年間も入り続けた大ヒット作なのである。これに気を良くしたフルチは「マンハッタン・ベイビー」、「墓地裏の家」、「ビヨンド」、「リッパー」、「マーダロック」など次々とゾンビものに軸を置いた形でスプラッター・ムービーの監督を務めた。特に「マーダロック」はアボアリッツ国際ファンタスティック映画祭でホラー賞を受賞(もっとも86年に新設されたこの賞は、フルチに賞を与える為に新設したと言っても過言ではなかろう)している。その「マーダロック」の1年前に監督したのが、このコンクエストである。

「コンクエスト」では、それまでかなりマンネリ化していたフルチが様々な映画テクニックを試みた実験映画的作品である。SFX面では通常を遥かに上回る200万ドルもの巨費をかけて製作している。(「サンゲリア」で約120万ドル、「地獄の門」で150万ドル)。 音も自ら口を挟み(というよりもクラウディオ・シモネッティからのアイディアなのだが)、ドルビーステレオになっているところが他の作品に見られない部分ではなかろうか?

なぜ、そこまで彼が「コンクエスト」に力を入れるかというと、それはホラー映画からSF映画へ移行をしようとしたからだ。

かねてからSFアクションに興味のあったフルチは「コンクエスト」のヒットを機に、ジャンルの転換を図ろうとしたが、もろくもその目論見は失敗に終わる。「コンクエスト」はヒットを飛ばした(封切り3日間のニューヨークのボックス・オフィスでは「エルム街の悪夢」とタイ記録)が彼の元へ来た監督の依頼は相変わらずホラー映画ばかりだったのである。

満ちる怨念

作文自体は、Italia 蔑視や、無駄に Budget にすがった杓子定規な評価をするところから、著者本人の意見ではなく、米国雑誌の記事をそのまま借用・翻訳したものである。不気味なのは、原著者、コピペ者ともに、ここまでの怨みを燃やす理由が不明なことである。

Dolby Stereo 礼賛という奇癖。

唯一客観的な立場で評価をしているのは Dolby Stereo の件。それでも疑問符をつけて読者に同意を確認するあたり、猿知恵を付けた小僧のようである。後は至極、独断と憎悪に任せた寸評に終止する。Dolby Sound を愛し過ぎた原著者は Phenomenaの Cranky Sound を知った時、心臓が止まってしまったという。

コピペ者の真相

実は、このコピペ者はパソ通草の根 BBS で、こまめに「加トケンおもしろビデオ」の解説を行っていた。その解説力は凄まじく、時には番組内における志村けんのビデオ評価をも覆してみせた。そして「おもしろビデオを Hollywood にした男」としてマニアの賞賛を浴びる。

しかし、栄光の日々は永くは続かなかった。「巨匠の日本版 VHS どこで買える?」という BBS が生まれたのである。人気はそちらに集中し、気がつけばコピペ者が主催する「おもしろビデオを語ろう!じゃかじゃん BBS」への書き込みは絶えていた。「投稿ビデオは Dolby Sound じゃない、だから負けたんだ!」コピペ者は、巨匠への復讐を誓った。

これが真相である。無数のおもしろビデオのダビング VHS とともに火葬場に入ったコピペ者は L’aldila で巨匠に土下座し、憔悴のあまり、二度目の逝去を迎えたという。地獄にも行けなかったその魂は Alamogordo, New Mexico の Atari Games の墓場を、今も虚しく飛び回っている。

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