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神探

表現主義。

解離性同一性障害で Metaphor された「歪んだ合理性」に寒気を覚える。鑑賞者の判断によって「屈指の名作」とも、疑問符だけで終わる作品ともなるだろう。僕はもちろん Masterpiece に挙げる。利己のみに作用する合理性、人間の底意地の悪さを見せつけられるような「怖気」が支配する。複数の人格を抱える登場人物達は Identify が難しい。誰からも「実体」が見えて来ない世界は、人口過密都市の Nihilistic な描写でもあり、不安を駆り立てられる。

《神探》海報

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  • 導演:杜琪峰/韋家輝
  • 編劇:韋家輝/歐健兒
  • 監製:杜琪峰/韋家輝
  • 攝影:鄭兆強/陶鴻武
  • 配樂:Xavier Jamaux
  • 領銜主演
    劉青雲 … 陳桂彬
    安志杰 … 何家安
    林家棟 … 高志偉
    林熙蕾 … 張美華
  • 主演
    李國麟 … 王國柱
    李彩寧 … 琪琪
    陳慧珊 … 張美華的「自私」
    張兆輝 … 高志偉的「凶殘」
    林雪 … 高志偉的「無知」
    劉錦玲 … 高志偉的「知慧」
    高雄 … 陳桂彬之退休上司
    谷祖琳 … 何家安的「智慧」
    李日升 … 何家安的「軟弱」
  • 獲獎
    第二十七屆香港電影金像獎
    最佳編劇:韋家輝/歐健兒
  • 出品:銀河映像一百年電影
  • 日期:2007年11月29日
  • 片長:91分
  • 日本版
    MAD探偵 7人の容疑者(最低の題名改竄)
    KenMedia 2011年08月02日 DVD
  • English title: Mad Detective

透明化する現実と夢の境界

本作には「表現主義」的な感覚がある。幾つもの対立と矛盾があり、現実と夢の境界は透明化していく。多元的解釈が可能である。日本版 DVD 付録の Interview を見て、合点がいった。『もしも Vincent Willem van Gogh が刑事であったら、どのような捜査をするのか?』という着想が本作の原点だったのだ。

さすが杜琪峰導演。予備知識なく見た僕にも、見事なまでに表現主義を感じさせた。こんなに「退屈ではない芸術映画」は初めてだ。とにかく強烈。Jean-Pierre JeunetJan Švankmajer の作品も知っているが、ここまで前衛的なものは知らない。僕が知っている懸疑片の最たるものといえば Cinema Italiano の Giallo だが、こんなに尖った作品には出会っていない。後年の《盲探》は、題名から本作との関連も感じさせるが、こちらはいわば「新即物主義」的に描かれている。本作よりも Entertainment を強めた作品だと思う。

人の内面が見えてしまう男

《神探》日版DVD
《神探》日版DVD

劉青雲が演じる主人公『陳桂彬』は、好むと好まざるとに関わらず「人の内面が見えてしまう」という異能の持ち主だ。彼の目には、勃興した心象のひとつひとつが「独立した人間」として見えており、各登場人物の「解離性同一性障害」かのような心の動きを捉え、欺瞞、自己弁護、動揺、絶望などを看破する。各人格が「まったく別個の人間」として見えているのが興味深い。

さらに、彼は「犯行状況を Simulate し、犯人や被害者の心情と Sync する」ことで捜査を行う。題名通りの「神探」だが…この捜査方法には恐怖すら覚える。なにせ『陳桂彬』は、犯行時における被害者の状況を探るため、相棒の『何家安』に自らを「土中に埋葬」させるなど、常軌を逸した行動を繰り返すのだ。

『陳桂彬』の奇行の数々、あらゆる登場人物の背後に現れる複数の人間…極めて異質な状況が連続し「この先、何が起きるのか?」が、これほど予想出来ない作品もない。

いや、本当に林熙蕾はたまらない美人だ!

本作には、間違いなく杜琪峰導演のお気に入りである、林熙蕾が『陳桂彬』の元妻『張美華』役で出演。『陳桂彬』の内面に存在し続ける「優しかった頃の妻」と、離婚を叩き付けた現実の「冷めた女性」という二つの人格を演じ分けている。今回の出演時間は短い。僕のような彼女のファンには《文雀》が Must-See だ。杜琪峰導演、林熙蕾・任達華主演作。これまた屈指の傑作。《暗戰2》や、王晶導演ならではの Sexy scene も若干ある《賭俠大戰拉斯維加斯》もおすすめ。

傲慢な合理性

『陳桂彬』の相棒『何家安』が象徴するのは「生き抜くための臨機応変な心象」それは時に「傲慢な合理性」である。演じるのは、あの安志杰。影圏屈指の実力派、劉青雲と並ぶ主演!

当然、本作には武術を Feature した場面は存在しない。動作場面もほとんどない。複雑怪奇に入り組んだ脚本、人間の内面を抉る物語、はっきり言って「芸術映画」である。極めて高度な「内面の演技」が要求される…そう、杜琪峰導演は知っている、安志杰が武術だけではないということを。その演技力も若手随一だということを!

本作は仏、英、独でも公開されており、安志杰の実力と評価は世界的に高まった。日本版付録 Interview を見てもわかるように、安志杰は非の打ち所のない好青年。僕にとっては、華仔謝霆鋒と並び、主演作があれば最優先で見る俳優だ。

林家棟

風暴
袁錦麟《風暴》2013

重度の解離性同一性障害者であり、交代人格の症状が顕著である被疑者『高志偉』を演じるのは、ご存知林家棟。この男の「幾つもの暗黒に蝕まれた内面」は、見た人にトラウマを残すかも知れない…でも、見た方が良い。

林家棟は、TVBの電視劇で顕著な実績を残しており、その活動に一区切りを付けた後、満を持して Focus Films に所属、華仔の片腕となった。《愛君如夢》や《得閒飲茶》におけるコミカルな補佐役から《風暴》での『陶成邦』のような重い主役まで演じる、実力派。

華仔とは硬い信頼で結ばれており、2010年には《打擂台》を Produce し、第三十屆香港電影金像獎の最佳電影を受賞。Focus Films に最高の栄誉をもたらした。Focus Films の前身といえる天幕製作で幾つか苦い経験もした華仔にとって、林家棟ほど頼もしい相棒はいないだろう。《打擂台》は黃又南のへっぽこさも良いし、賈曉晨の可愛らしさも堪らない。

群雄割拠すぎる2007年。

杜琪峰班と言える林雪張兆輝も『高志偉』の人格の一人として出演。脇を固める俳優陣も実に魅力的だ。それにしても2007年は群雄割拠。最佳電影こそ《投名狀》だが、もう一方の華仔主演、僕のお気に入り張靜初との共演の《門徒》もある。さらに、宇宙最強の《導火綫》そしてこの《神探》という、いずれもが屈指の名作。各作品、日本語字幕付き Media も、しっかり Release されているので、すべて押さえるべし。

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Kazu Spara in 25 May 2017
Kazu Spara