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原振俠與衛斯理

香港四大才子の二大巨頭が関わる大作。

醜悪な Creatures と吹き出す血飛沫の Gore 満載。その上で最恐は『原振俠』に容赦なく膝蹴りをブチ込む王龍威老大だったりする。《孔雀王子》を撮った藍乃才監督作。幾度も電影化されている人気小説《原振侠传奇》第三部「血咒」を脚色し映像化。高精度の造形、巧みな演出と外連味のない脚本で充実度は非常に高い。Hollywood を意識した演出や The Return of the Living Dead, Indiana Jones, Alien からの直接的影響が見える。

藍乃才《原振俠與衛斯理》1986

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気持ち悪い。

香港四大才子の二大巨頭が関わる大作。科學幻想小説の大家、倪匡による Sci-Fi/Adventure 小説《原振侠传奇》の第三部「血咒」を映画向けに脚色した映像化作品。香港きっての事業家である蔡瀾が Produce している。『衛斯理』系列は幾度も電影化されている人気シリーズだ。

僕は原作を読んでいないが Wikipedia によると「第三者が物語る」形式になっているという。そのため、本作の冒頭に「ワイングラスを片手に美女を侍らせた」この手のナレーターの定番的な大金持ちの紳士が登場。演じているのは倪匡自身である。涼し気な微笑を湛え、柔らかな物腰で「身の毛もよだつ物語」へと僕らを誘うのだ。

確かに、豪華キャストかつ超豪華な客串。僕もそこに惹かれて、この日本版 DVD を手に取った。しかし!この作品は、いわゆる Horror 映画に免疫のない(僕のような)人には推薦しない。喜劇要素皆無の Serious なガチガチの Sci-Fi Gore Fantasy とでも形容すべき作品なのだ。うんざりするほど醜悪な完成度を誇る Creatures そして Maestro 信奉者も納得の、蛆虫たっぷりな Gore 要素満載、吹き出す血飛沫。あの紳士、倪匡が演じているので偉大な人物であることは確かだが、余裕でこんな話をかませるとは、一体どういう神経をしているのか?「いやぁ、凄い冒険だったね。」なんて吹かす気だろうか?僕は「予想を遥かに超えている、耐え難い気持ち悪さじゃないか!」と激しく抗議したい。なんなら映画の世界に入って、紳士の頭にワインをぶっかけてやりたい。

しかし最恐は王龍威老体。

客串でも良いので、老体が完全無欠の英雄を演じる作品を見てみたい。老体が演じるのは序盤に現れる強盗班の首領。客串ですら極悪人を演じているのである。異様に趣味の悪いシャツ、アフロのようなパンチパーマ、そして口髭。老大、現代の格好をしていると本当に怖い。主人公『原振俠』に容赦なく膝蹴りをブチ込む様は、完全に極道である。引きの画角だけに「目撃」してしまった感も強い。この恐怖感は Creature を超えている。そして、あの死に様である。最初から最後まで揺るぎなく怖い。

錢小豪と狄威がコンビを組んで、狂気の呪術師が率いる邪悪な部族に挑む!

劉豪偉《開心鬼精靈》1986
劉豪偉《開心鬼精靈》1986

主人公『原振俠』を演じるのは錢小豪。ご存知、武打に優れた二枚目人気俳優であり、同年の《開心鬼精靈》においても主演。こちらでは二枚目半を演じ、コミカルな演技を披露している。《少林與武當》における『魏興洪』役も印象深い。

狄威が英雄として活躍する作品は貴重、非常に嬉しい!

血咒編のゲスト主人公である『黒龍』を演じるのは狄威。本作では、得意の蹴り技が炸裂しまくる八面六臂の大活躍。仏像の上で、突如湧き出る法僧集団との死闘は緊迫感溢れる。敵の本拠地に突入する際も『原振俠』がライフル武装なのに対し『黒龍』は、あくまで弓。至近距離でライフルをぶっ放した『原振俠』は、敵兵を 1m 程吹っ飛ばす。そして『黒龍』も、引き絞った弓で敵兵を撃ち抜き 1m 程吹っ飛ばした…『黒龍』強し!

物語の顛末は、あっさりとした訓示を交えつつ「救われない感」が残る。主人公『原振俠』だけ救われて、己の命を顧みず『原振俠』を救った『芭珠』の呪いが残ったままなので、完全な Bad End である。『原振俠』の恋人的存在『彩虹』の救出を優先し、自分の恋人である『芭珠』を救うことを「忘れていた」という失態を犯した『黑龍』が不憫でならない。

普段はゴルフクラブ、有事はミサイルランチャー、底知れぬ男『衛斯理』

葉偉民《百變星君》1995
葉偉民《百變星君》1995

周潤發が演じる『衛斯理』は例えるなら Sherlock Holmes のような人物。そもそも『原振俠』の先生という Advisor 的な立ち位置の登場人物ゆえに、散発的かつ短時間「差し込み」的に現れるのみ。序盤はゴルフクラブを持っているが、最終局面ではミサイルランチャーを持っているという底知れぬ男である。その妻『白素』には胡慧中。張曼玉と胡慧中の共演とは、成龍映画ファンにも強く訴求しそうではあるが、同じ画面に映るシーンは劇終直前だけである。狂気の呪術師 Aquala は悪の首領の定番といえる徐錦江が演じている。声は吹き替えのようにも感じられるが…あのオカマ声、本人によるものだろうか?後年の周星馳主演、僕の大好きな《百變星君》を鑑みれば、やりかねない俳優だとは思う。

張曼玉が小红姐の後頭部をレンガで殴る

記者を生業とするヒロイン『彩虹』は張曼玉が演じている。90’s の Revival 流行を先取りした Shaggy Hair で、やはりお洒落、素晴らしく可愛いのだが、彼女の取材方法は無茶である。無茶ついでに落とし穴にもはまる。最序盤に、豪華客串によって演じられた香港警察の強盗逮捕劇が展開される。これは原作を読んでいない視聴者に、主人公『原振俠』の性格を説明するための、いわば序章である。警察の隊長は倉田保昭、巡査長に爾冬陞と汪禹、そして検察官を惠英紅が演じている(このキャストによる刑事映画があれば絶対見る!)のだが、警察に突撃取材を拒否された『彩虹』は、あろうことか検察官の後頭部を、そこらに落ちていたレンガで殴りつける。うなじだけ映った小紅姐は「うっ!」と唸って気絶…これには僕も「うっ!」と唸ってしまった。そして『彩虹』は検察官になりかわって強盗現場への潜入取材を強行するのである。

高精度の造形、巧みな演出と外連味のない脚本が見事。

藍乃才《孔雀王子》1988
藍乃才《孔雀王子》1988

監督は後に《孔雀王子》を撮った藍乃才。かなり Hollywood を意識した演出がなされており、とりわけ Dynamic Range の高・低部を強調した Contrast が強い米国風の Film 色彩は特徴的。格闘場面で High Tension の劇伴が「鳴りっぱなし」な辺りも、やはり Hollywood 的というか Video Games 的な感覚を抱かせる。だが、香港電影としては違和感があるだけで、決して悪い演出ではない。この監督、演出が上手で、作品の完成度はかなり高い。ロケーション撮影はタイで行われている。巨額が投資されおり SFX と造形も高精度。香港電影ならではの Wire を利用した Creature の飛行は迫真であり、未知生物が実在しているかのように思われ、かなりの恐怖を煽られる。

仏像の頭で Indiana Jones の Homage を敢行。

Creature 造形には Alien (1979) や、本作の前年、1985年に公開された The Return of the Living Dead からの直接的影響が見て取れるがバタリアン風のゾンビが Alien に変体する、いわば流行物の Mixture は、短絡的なようでいて、そうは思いつかない奇抜な発想だ。また、同年の《魔翡翠》と同じく 80’s 後期作だけに Indiana Jones (1981) の要素も取り入れているが、こちらは「転がる巨石に追い駆けられる」という露骨な模倣を敢行している。しかし、転がってくる石が「仏像の頭」という罰当たりさで、引用元の斜め上を行った感がある。

客串を探せ!

序盤に出演する客串が半端じゃない豪華さ!邵氏兄弟有限公司で主演作を持つ一流どころが集う。王晶も抜かりなく出演。

  • 倉田保昭:警察の隊長
  • 汪禹と爾冬陞:巡査
  • 惠英紅:検察官(張曼玉に後頭部をレンガで殴られる…)
  • 王龍威:強盗犯の首領(本作で最も怖い)
  • 楚原:業界の大先生(業界は不明)
  • 王晶:業界で幅を利かせているっぽいスケベ親父
  • 利智:パーティの客のひとり

さらに「東方禿鷹」で手首から先を切られてしまった美女を演じた、洪金寶夫人の高麗虹も Uncredit 出演とのこと。だが、どこに出演していたのかは掴めなかった。こんな具合に「他の作品と一部ロケが被ってたんじゃないか」的な魅力もある。「誰がどこに出ているか?」を探求してみるのも面白い。

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Kazu Spara in 25 May 2017
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