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Il momento di uccidere

Giallo の要素を併せ持った西部劇。

Giuliano Carnimeo 監督の記念すべき Spaghetti Western 第一作であり、監督デビュー二作目。物語終盤には Filter を用いた眩暈の表現など他作品とは一味違う Psychedelic な演出を行っており Horst Frank を倒す際の止めの一撃もアッと驚く斬新なもの。結末も不思議な余韻を残し、西部劇というより、むしろ Suspense に近い幕引きとなっている。

Il momento di uccidere

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  • Regia: Giuliano Carnimeo
  • Soggetto
    Fabio Piccioni / Bruno Leder / Francesco Scardamaglia
    Screenplay: Tito Carpi
    Idea: Enzo G. Castellari
  • Fotografia: Stelvio Massi
  • Musica: Francesco De Masi
  • Produttore: Pier Ludovico Pavoni
  • Interpreti
    George Hilton … Lord
    Horst Frank … Jason Forester
    Loni von Friedl … Regina Forester
  • Durata / Anno: 1968 / 92 minuti
  • Produzione
    Italia: EIA / P.C.E.
    Germania: Terra-Filmkunst
  • Titolo
    対訳:殺しの瞬間
    Francese: Le moment de tuer

財宝にまつわる謎解きという Giallo 要素を採り入れた斬新な西部劇

Giuliano Carnimeo (Anthony Ascott) 監督の記念すべき Spaghetti Western 第一作であり、監督デビュー二作目となった今作は Giallo の要素を併せ持った西部劇と形容して良いだろう。物語終盤には Filter を用いた眩暈の表現など他作品とは一味違う Psychedelic な演出を行っており Horst Frank を倒す際の止めの一撃もアッと驚く斬新なもの。結末も不思議な余韻を残し、西部劇というより、むしろ Suspense に近い幕引きとなっている。

全体のトーンは総じて Serious で、一連の Carnimeo 謹製西部劇の礎となっていることがよくわかる作品だ。劇伴は Francesco De Masi によるもので、楽曲のスタイルが非常に Vado… l’ammazzo e torno と似ている。主演 George Hilton のイメージに合わせたのだろうか。世界観も話の筋も全く異なるのに、僕はこの二作品には同じような印象を持っている。ただ単純に見た時期が近かったからだろうが。

Il rivoluzionario

Buon funerale amigos… paga Sartana
Buon funerale amigos… paga Sartana

イタリア映画黄金期の監督たちにおいて Giuliano Carnimeo は「緻密な伏線が張り巡らされた物語と、破天荒な主人公の生き様を Dynamic に描き出す」ことに長けた Hard-boiled と Dandyism における天才である。

本作、そして Buon funerale amigos… paga Sartana に見られる「主人公がひとつの手掛かりをもとに、複数の人物から情報を得て目的に辿りつく」というスキームは、まさに Giallo である。主人公のガンマンが賞金稼ぎ "Bounty Killer" というより、むしろ隠された財宝を捜し求める "Treasure Hunter" であるという点も興味深い。

西部劇と言えば、無頼漢や革命家達の過酷な生き様を通して、主人公に感情移入し自分の生き方を投影させることに Catharsis があるのだが、今作ではさらに、財宝にまつわる謎解きの面白みを付加したのである。

本作は Spaghetti Western という Category が「米国の真面目な時代劇」という枠を飛び越え、より幅広い形態を追求し始めた時期の作品と言える。60年代末期期より Spaghetti Western において Comedy 要素を内含した作品群が主流となって来る(米国人がこれをどう思ったかは想像に難くない)わけだが、その決定的な橋渡しをしたのが翌年に公開される珠玉の名作 Lo chiamavano Trinità… である。

Trinità 人気は爆発的であり、以降の Spaghetti Western の流れに絶大な影響を与えた。Spaghetti Western の典型的英雄像が "Django" から "Trinità" へと変わったと言っても過言ではない。Enzo Barboni, Gianfranco Parolini, Enzo G. Castellari といった、通称三大 Sergio (Sergio Leone, Sergio Corbucci, Sergio Sollima) 以降の監督たちが築いた L’età d’oro 黄金時代である。

その一方では推理小説を映画化したような Giallo という分野においても新世代の台頭はめざましく Sergio Martino, Massimo Dallamano などの監督達による傑作が続々と排出された。Giallo は Spaghetti Western と並ぶ Cinema italiano の代名詞として確立、世界的な人気を誇る。Giuliano Carnimeo はその Giallo の要素を自らの西部劇に採り入れることで新たなスタイルを提示し、改革者として名声を馳せる。

Giallo e Commedia Sexy

Perché quelle strane gocce di sangue sul corpo di Jennifer?
Bruno Nicolai "Perché quelle strane gocce di sangue sul corpo di Jennifer?" 1972

Giuliano Carnimeo は後年 Giallo においても一本ではあるが、屈指の名作 Perché quelle strane gocce di sangue sul corpo di Jennifer?(対訳:なぜこの奇妙な血がジェニファーの体に?※日本未公開)を残しており Spaghetti Western, Giallo の両ジャンルにおいて才能を発揮した一流の監督である。

余談だが、この Jenifer も大好きな作品。主演は Edwige Fenech とやはり Geroge Hilton で、陶酔度数が極度に高い。演出面も然りだが Bruno Nicolai による劇伴がまた秀逸なので、映画自体は未見でも OST の購入は強くお勧め。

反面 Commedia だけは不得手な印象があり、こちらは映画学校時代からの先輩である Gianfranco Parolini の独壇場といったところか。

1978年以後は時流に乗って…というよりプロデューサーからの要望が強かったのだろう Commedia Sexy 作品などにも手を付けざるを得なかったが、監督としての全盛期は過ぎてしまった感がある。80年代に入ると、もはや監督の才能を伺い知る作品と巡り会うことは難しい。

Il momento di uccidere は Giuliano Carnimeo という 希代の名監督が Spaghetti Western 史上に残した足跡を辿る意味で重要な作品であり、こうした素晴らしい作品群が我が国、日本で多少なりとも紹介される機会があれば監督の人気もより高まり DVD or Blu-ray 化も促進されるであろう。それを願ってやまない。

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