Heijastin

Gli occhi freddi della paura

形だけの正義。

虚偽の判決による「冤罪」で人生を狂わされた男。その偏執的なまでの復讐心が、社会制度の「奢り」を抉り出す。序盤の洒落た雰囲気から一転 Psychological Thriller と形容すべき異質な密室劇が展開される。La polizia incrimina, la legge assolve に通じる「法の形骸化」を批判する作品。

Gli occhi freddi della paura

Amazon 维基百科 IMDb
  • Regia: Enzo G. Castellari
  • Soggetto
    Tito Carpi
    Enzo G. Castellari
    Leo Anchóriz
  • Fotografia: Antonio L. Ballesteros
  • Musica: Ennio Morricone
  • Produttore: José Frade
  • Interpreti
    Gianni Garko … Peter Flower
    Giovanna Ralli … Anna
    Frank Wolff … Arthur Welt
    Julián Mateos … Quill
    Fernando Rey … Juez Flower
    Leonardo Scavino … Hawkins the butler
  • Durata / Anno: 1971 / 95 minuti
  • Produzione
    Italia: Cinemar
    España: Atlántida Films
  • Titolo
    対訳:戦慄の冷酷なる眼差し
    Spagnolo: Los fríos ojos del miedo
    Inglese:Cold Eyes of Fear
    USA TV title:Desperate Moments

社会制度の驕りを抉り出す!極限状態の感情がせめぎ合う密室劇。

大儀の分類では Giallo の範疇に入るであろう作品で、確かに全体のトーンは Giallo そのもの。冒頭の辺りは、僕の知る Castellari 監督とはおよそ別人としか思えない演出が続きました。だが、それがいい。

物語は、正体不明の連続殺人とその複数の容疑者…といった定番ではなく、現代風に形容すればサイコスリラーの趣を持っています。真犯人が誰か、というよりも「表面張力で保たれた極限状態の感情が、遂に堰を切り溢れ出す」かのような人間ドラマを描いた作品です。

とある高級邸宅の一室を舞台に繰り広げられる、4人の個性的な人物達による密室劇。冒頭の殺人を模した舞台劇、そしてテープレコーダーを用いた事件の真理究明は 5 bambole per la luna d’agosto の影響もあるかも知れません。

Aria d’Inghilterra

Gli occhi freddi della paura - Gianni Garko
Gianni Garko as Peter Flower
Gli occhi freddi della paura - Giovanna Ralli
Giovanna Ralli as Anna

Location は珍しくイギリスで、人物設定もイギリス人。なるほど、それでイギリスの映像ソフトメーカー Redumption/Salvation が目を付けたわけですね。Gianni Garko がスコットランド系の弁護士を演じていますが、あの髪型や服、ライターの選択は確かにブリティッシュ。

紅茶も特徴的でした。Fernando Rey がヤカンでお湯を沸かしたり Giovanna Ralli が「ミルクにするレモンにする?」と聞いたり。Frank Wolff はウィスキーをがぶ飲み。カフェとワイン、シャンパンの文化圏との違いが細部にきちんと描かれていました。

それに、いい加減で人の話を聞かないイギリス市警…これは本作の主題である「形だけの正義」を見事に象徴しています。こうした特徴は納得。僕にとってイギリスも好きな国ですが、若干こんな印象があります。僕は1ヶ月という短期ではありますが、イギリスは Norwich という市にホームステイで居ました。ちなみに、ここの特産品であるマスタードは絶品です。

Belinda May

Mondo Morricone
Mondo Morricone

開始すぐの舞台劇の後、Gianni Garko 演ずる『ピーター』と Giovanna Ralli 演ずるイタリアの娼婦が2人で街に繰り出します。そのデートのシーンが良い!無邪気な Gianni Garko の笑顔は、そうそう見れません。Gianni Garko = Sartana は揺ぎ無いのですが、今作の役どころも凄く格好良かった。

バックで流れる Ennio Morricone による劇伴の一曲 Belinda May(Compilation "Mondo Morricone" Track.12 に収録)は、1969年になんとアドルフォ・チェリが監督・脚本した映画 L’alibi からの再利用のようです。

僕はこの L’Alibi は未見ですが、気になりますね。実際、この曲にイギリスの骨ばった町並みは似あわない、イタリアの緩やかな空気が欲しいところです。ただ主演の2人はとても楽しそうでした、いいなぁ。

Relitto della legge

Gli occhi freddi della paura - Frank Wolff
Frank Wolff as Arthur Welt
Gli occhi freddi della paura - Julián Mateos
Julián Mateos as Quill

Frank Wolff が強烈なインパクトを与えてくれました。西部劇ファンには新鮮な驚きがある役どころではないでしょうか。物語は最終的に Frank Wolff 演ずる「復讐に狂った男」の人生感へと絞り込まれてきます。本作で最も重要な役で、主人公の弁護士ピーターとの直接対決もあります。

映画の最中は意識しませんでしたが、今思い返せば、そこに西部劇の監督 Enzo G. Castellari を見た思い。やはり Gianni Garko 対 Frank Wolff という図式は西部劇しか思い浮かばないですものね。

さらに、注目はスペインの俳優 Julián Mateos この人はどうやらスペインローカル映画がメインのようですが、強い存在感を持っています。彼が演ずる『クゥイル』という暴漢の登場により、物語の本筋が始まると共に、緊張感がいっきに高まります。

2枚目だが、狂気走ったクゥイルという人物は、洗練されたコスチュームもさることながら、挙動や発言も非常に扇情的。最も印象に残る(最も僕を脅かした)人物でした。Julián Mateos の他の出演作も是非見てみたいです。

E "La polizia incrimina, la legge assolve"

La polizia incrimina, la legge assolve OST
Guido e Maurizio De Angelis "La polizia incrimina, la legge assolve" 1973

この Gli occhi freddi della paura は僕にとっては屈指の傑作、鬼気迫る人間ドラマです。賄賂により判決を私物化する、絶対的な法の施行者であるべき裁判官の腐敗、そしてその虚偽の判決による被害者の「社会」というシステムそのものへの狂気に満ちた怨念… Castellari 監督と名パートナーである脚本家 Tito Carpi の最も得意とする「驕った体制を痛烈な批判」する姿勢が貫かれています。

Castellari 監督と Carpi は2年後 La polizia incrimina, la legge assolve(対訳:警察は告発し、法は無罪放免する/邦題:死神の骨をしゃぶれ)を発表、さらに研ぎ澄まされた視点で社会の腐敗を抉り出します。

これらの政治的意識をもった傑作たちが、我が国でまるで評価されないというのは不思議です。これら作品が伝えようとするメッセージは、とりわけ現代日本人の「身につまされる」ものでありましょうが。

映画の裏側をみれば、製作費(Buget) は比較的低いでしょう。ロケも終始、一軒家の屋内ですし、役者も基本的に4人のみ、音楽もメインテーマとヴァージョン違いの数曲。こうなると、情景変化が少ないので役者の存在感の強さと演技に作品が左右されてくる訳です。

その役者選択はまさに完璧であった、と言えます。尚且つ、監督の演出と脚本の巧妙さが絶妙な緊迫感を生み出しています。要は、演出家の感性と発想、そして役者が発する人間性…つまりイマジネーション (Immaginazione) と ヒューマニティ (Umanita) こそがエンターテイメントにおける映像作品の根本である、と僕は思います。

良いチームを組み、メンバーとの相互理解の上に立ち、各人の個性を存分に引き出す演出が出来る監督、そんな Castellari 監督のような人物がイタリアには多いと感じています。表からも、そして裏からも、現代に欠けている精神的要素が、この作品を通して見えて来ました。

本作を見るまでの気持ちと状況

約3ヶ月という長期に渡り、映画どころか PC のモニタ以外を見ない日々が続いていましたが、遂に解禁。何から見ようか…と思案しつつ選んだのが2002年の4月に購入しておいた Gli occhi freddi della paura の日本版 DVD でした。

実は、この作品は西部劇や刑事映画の Castellari 監督にしては「やや異質だな」という先入観があり、期待はほとんど、と言って良いまでにしていなかったんです。ですが…まず作品自体を見終えての感想は、当然、何かを書きたいと思うほどに素晴らしい!

監督は、僕の浅はかな偏見を、いとも容易く超越する演出とアイディアを、これでもかと見せてくれました。単刀直入に、僕なりにこの作品を表現すれば「怖い!」幼稚な表現ではありますが、もう、とにかく緊張して怖かった。

Tags
Kazu Spara in 25 May 2017
Kazu Spara