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阿虎

熱い魂が宿る!華仔の天幕製作十周年記念作。

三年後の Ong-Bak による流行に先駆け、ムエタイを題材に扱う先見の明!当時流行の K-1 などに触発された打撃系立ち技格闘技、主演女優は日本人という、異色かつ挑戦的な作品。前年、1999年《暗戰》で杜琪峰導演との名コンビを始動、華仔の演技は円熟の域に達している。WKA Kick Boxing 元王者、周比利を拳術顧問に迎え、ムエタイに対する本気度は電影の枠を超越。40歳が嘘に思えるほど凄まじい肉体に畏怖を覚える。

《阿虎》 海報

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  • 導演:李仁港
  • 編劇
    張志成
    李仁港
    李厚頎
  • 動作設計:徐寶華
  • 拳術顧問:周比利
  • 監製
    劉德華
    爾冬陞
    禤嘉珍
  • 攝影
    姜國民
    曾達時
    楊耀輝
  • 配樂:黎允文
  • 歌曲
    主題曲:劉德華〈当我遇上你〉
    插曲:劉德華〈微笑〉
  • 領銜主演
    劉德華 … 孟虎
    常盤貴子 … 澪子
  • 主演
    Inthira Charoenpura … Pim
    Apichaya Thanatthanapong … Ploy
    Niruj Soasudchart … Tawon
  • 出品:天幕製作中國星集團
  • 日期:2000年12月21日
  • 片長:105分
  • 日本版
    ファイターズ・ブルース
    オルスタックソフト販売 2014年07月29日 DVD HD Master 版
    SPO 2001年11月02日 DVD 特別版
  • English title: A Fighter’s Blues

すべてを終わらせる贖罪のリング、全身全霊をかけた男は、失ったものを取り戻す…

劉德華《繼續談情》2005 香港版
劉德華《繼續談情》2005 香港版

主題歌《当我遇上你》插曲《微笑》ともに華仔自身の作詞であり、2001年1月発売の精選 The Melody Andy Vol.8 に収録されている。2005年12月発売の精選《繼續談情》には主題曲のみ収録。この香港版專輯の表紙は抜群に格好良い。しかし、貴重盤であり入手はかなり困難。非常に悔しい… Digital Album 版ならば、どちらも Apple Music からすぐに購入出来る。

泣きつかれるほど泣かされた。

迸る情熱の炎、一直線に突っ走り、命を燃やす感動。恨み、妬み、辛気臭さなどは一切ない、余りにも透明な生き様が描かれる。香港からバンコクに渡り、ムエタイのトップ選出として活躍していた男『孟虎』の半生を描いた人間ドラマであり、作品の仕上がりは『孟虎』の存在に、すべてがかかっているのである。

この作品で、華仔第六届香港電影金紫荊獎「最佳男主角」にノミネートされている。華仔の演技で、何度も泣いた。劇的な幕切れに涙が止まらなかった。華仔は、完璧に『孟虎』になっていた。

改めて、その人間味溢れる演技、幅広い表現力を実感。そして永遠の美形である。変わりにない若さにも驚愕するしかない。1961年09月27日生まれ、撮影当時は『孟虎』と同じ40歳なのだが、無駄を削ぎ落とした格闘家の肉体は、現役選手そのもの。周比利が拳術顧問として参加、厶エタイの練習・試合場面も本格的に取り組まれている。周比利は、52戦中43勝、31KO という恐るべき戦績を誇る、中国人唯一の WKA Kick Boxing 王者だ。

製作は華仔自身が設立した「天幕製作」その想いは今 Focus Film に!

《阿虎》は華仔自身が設立した制作会社「天幕製作」がプロデュースする作品だけに、魂が宿っている。香港返還の1997年、天幕製作は、第十七屆香港電影金像獎で最佳電影を受賞した《香港製造》という悲痛なる歴史的名作も生み出している。主演の李燦森という強烈な個性の輩出など、電影史に大きな足跡を残す会社である。2002年に幕を閉じた天幕製作だが、2005年より、華仔は若い映画人に光を当てるべく Focus Film(映藝娛樂)を始動。香港電影、いや亜洲影圏の未来を背負う。

さすが華仔に先見の明あり!タイ映画の裾野は拡がっている。

Prachya Pinkaew - Ong-Bak (2003)
Prachya Pinkaew "Ong-Bak" 2003

物語は、タイの特別市パッタヤーを舞台としており、タイの俳優陣が揃う。タイ映画に明るい方には、意外な俳優や、大物が出演していたり、と興味深い発見のある作品かも知れない。本作から三年後の2003年に Ong-bak(マッハ)が世界的な話題作となり、タイ映画に注目が集まったのは記憶に新しい。華仔はタイ映画ブームを先取りしていたのだ!さすが華仔!凄いぜ、天幕製作!

Ploy を演じる Apichaya Thanatthanapong は十代の若者ながら、胸に迫る、深みある演技を見せる。『孟虎』と少しずつ親子の距離を縮めていく演出と相まり、感動がじわりと湧き上がってくる。

また Pim を演じる Inthira Charoenpura の存在感、透明感も印象的。最終局面に登場する、連続六回防衛という金字塔を打ち立てたムエタイ最強王者 Tawon を演じた Niruj Soasudchart は、恐らく現役選手であろう。劇中では敵役に相当するのだが、実に味わい深い演技を見せており、最後に『孟虎』を称える爽やかな表情が、また涙を誘う。

タイの主要俳優陣の演技力に支えられ、この名作が生み出されたのだ。確かに、タイ映画の裾野も拡がりを見せている。中華圏の文化に共通する題材を扱う作品もあるだろう。『阿虎』をきっかけに、改めてタイ映画に注目してみるのも面白い。

《少年阿虎》は、いわば並行世界の阿虎。

李仁港《少年阿虎》2003
李仁港《少年阿虎》2003

李仁港監督は2003年に本作の Prequel を思わせる《少年阿虎》を撮っている。この物語は本作と直接繋がってはいない。いわば「並行世界」の阿虎だ。共通するのは主人公が『阿虎』と呼ばれるムエタイの選手であること。

この《少年阿虎》はっきりいって名作。《阿虎》は深刻な物語だが、こちらは「青春の輝きと甘酸っぱさ」を描いており、さらに僕好み。《嘩!英雄》を思わせる雰囲気がある。

主演は、ご存知 F4 の吳建豪、敵役には安志杰という絶妙の配役。主演女優は韓国の美女優、金賢珠。台湾と韓国の俳優を中心に据えた、これまた異色の香港電影だ。喧嘩っ早い熱血生徒と美人教師の「歳の差恋愛」を軸とした、台湾電視劇・韓流ドラマでお馴染みの「学園青春ドラマ」は、とりわけ女性には、とっつきやすいはず。

ムエタイ場面は、若き達人・安志杰と功夫マニアの吳建豪だけに本気度 Max である。危険度の高い打撃が頻出、スリリングな攻防が展開される。そして、ほろりと来る恋愛劇では、金賢珠の清楚な美しさが強く印象に残る。これぞ青春。

トラックを追いかける『孟虎』に涙する『澪子』には強く心を動かされた

阿虎
《阿虎》日版DVD

《阿虎》の俳優陣の演技力は当然、世界レベルである。また繊細な感情表現が要求される脚本だけに、ひとつひとつの演技の「間」が重要になる。危惧した通り、常盤貴子の演じる『澪子』の所作には、日本のテレビドラマの影響が色濃く見えた。

外見的には、僕もデビュー時より注目していたし、非の打ち所のない美人女優なのだが…蝋人形のような作り笑い、固まったままの表情と体。演技力において、他の俳優との間に明確な隔たりがあり『澪子』は作品の世界観から「浮いた」登場人物に感じられた。

しかし『孟虎』と心が通う終盤、トラックを追いかける『孟虎』の姿に涙する場面には、強く心を動かされた。華仔の熱い魂は、触れた相手の心に火を灯すのか!情熱迸る素晴らしい Scene に泣いた。世界にその名を刻む、我らが英雄「劉德華」との共演という稀代の好機を得た女優、常盤貴子の更なる飛躍を望む。

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