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老虎田雞

劉家班×洪家班、洪拳與詠春、武術と爆笑が高純度融合!

二枚目の賞金稼ぎ『老虎』と、受難の男『田雞』が、伝説の鎖帷子『鐵布衫』を巡って丁々発止の駆け引きを展開。美女盗賊『千手觀音』の介入で、達人『白眉和尚』と対峙する羽目に。恐怖の「蟹拳」に対抗すべく、二人は一時休戦。一心同体の陣法で挑む。

《老虎田雞》日版DVD
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「洪拳與詠春」の図式も見える、奥深い作品。

劉家班と洪家班による夢の合作、画面に映った瞬間から「開心」を運ぶ名優、劉家榮洪金寶の共演が実現!編劇に天性の喜劇人、曾志偉が加わり、麥嘉の初監督にして紛うことなき名作が誕生した。

序盤から劉家榮の超高速の旋棍が炸裂、嵐のような激しさに血が沸騰!縄镖を用いた多彩な技も圧巻。続けて洪金寶が、そっくりの似顔絵に Cross over しての登場、爆笑!体型を度外視した身軽さと、重さを活かした剛拳で八面六臂の大暴れ!さらに終盤には三節棍で、劉家榮と激突。

最初から最後まで熱気と狂喜に溢れており、一気に楽しめる。劉家榮の領銜主演作としても貴重。劉家洪拳と詠春拳の洪金寶という「洪拳與詠春」の図式も見える、奥深い作品なのである!

劉家榮が演じる『老虎』は、その名の通り「老獪」な立ち回りと「虎」の如き強さを誇る。賞金稼ぎや探偵家業で生計を建てる、勝手気ままな男だ。二枚目だが、性格は高慢で、恐ろしく金に汚い。

『肥春』に『田雞』とはなんという…

《贊先生與找錢華》日版DVD
洪金寶/崔東俊《贊先生與找錢華》1978

洪金寶が演じる受難の男『田雞』とは酷い名前である。蛙肉という意味で、食用蛙の食材としての呼称なのだ。洪金寶という人は《贊先生與找錢華》の『肥春』など衝撃的な役名が多いが『田雞』には絶句。

『田雞』は、洪金寶の定番的な、愚直なまでに素直な男で、腕っ節は立つが勉学に疎い。あらゆる刃物から身を守る伝説の鎖帷子『鐵布衫』を手に入れるため、その持ち主の老婆と結婚した。動機はどうであれ、盗みに走らず、倫理的な方法で宝物を入手した、立派な男である。しかし、持ち前のスケベさが災いし、美女盗賊『千手觀音』に『鐵布衫』を盗まれてしまう。そこから『老虎』との腐れ縁が始まり『鐵布衫』を巡って、街を仕切る悪漢どもを交えた、丁々発止の駆け引きが始まるのだ。

名脇役、杜少明と陳龍も活躍!白眉和尚の異様な殺人拳「蟹拳」も強烈。

名脇役の杜少明と陳龍が、また抜群に面白い!杜少明演じる『トリプル・トリック(原名不詳)』による、文字通りの「毒気」溢れる笑い。そして陳龍が随所で見せるボケ。小さな役でも、印象に残る活躍の場があるため、映像内の世界が実に活き活きとしている。細部に至るまで、深く作り込む、丁寧な監督が見事だ。

序盤の馮克安の不格好な死に様も必見。火星の演じるヤクザ者の手下として、人気俳優となる前の林正英と元彪も出演。定番と言える、石天の狂気に満ちた爆笑演技や、白眉和尚の異様な殺人拳「蟹拳」も大きな見どころ。

偉大なる武術家、劉家榮をもっと知りたい!

《螳螂》日本版DVD
劉家良《螳螂》1978

劉家榮は言わずと知れた「洪拳」の達人。劉家良を兄に持ち、劉家班として数多の邵氏兄弟有限公司作品に出演、動作設計を担当。名作には、決まって劉家榮の名があるのだ。張徹作品では、例えば《獨臂刀王》での『地藏王石虎』や、狄龍主演の《拳擊》でのムエタイ拳士といった、変則的な役柄も印象的。

驚くべきことに、劉家榮は本作と同年の武俠片五指に入る傑作《螳螂》にて、形影相随という拳法の達人である仇敵『田老太爺』を演じている。『老虎』と同俳優とは到底思えない、威厳と貫禄に溢れた重々しい演技で、実年齢を遥かに超えた老拳士を表現。素晴らしい演技力を見せる。

また、傅聲張展鵬兄弟主演の1981年《龍虎小英雄》において、劉家榮は骨董品店の老店主を演じ、本作で『田雞』がやられたように、傅聲演じる『執到寶』によって、全身に陶器を挟まれ行動を封じられてしまう。これは本作の Homage であろう。

劉家榮は《小生怕怕》(邦題:魔界天使 ※劇場公開のみ未ソフト化)《龍之家族》といった興行的大成功を収めた作品の監督としても、その名を刻む。《龍之家族》は、近日中に見ることが出来そうだ。

また、2011年の洪天照・Kane Kosugi 主演作《蔡李彿》邦題「燃えよ!マッハ拳」に洪拳師傅役で客演。出番は一瞬だが、64歳ながら、他の演者を圧倒する凄まじき拳速を見せる。映画内容と無関係の荒唐無稽な邦題と思いきや「マッハ拳」とは劉家榮のことを指していた!この達人に衰えというものはない、恐るべし!

洪金寶は僕の先生。

洪金寶 on Inside Kung Fu
Inside Kung Fu

僕は、洪金寶主演・監督作品の数々を鑑賞し、すっかり香港電影の魅力に取り憑かれた。洪金寶という人は、完全無欠の英雄ではなく「気が弱く、アホでスケベだが、真っ正直な正義感」という非常に人間臭い役柄を好む。モテないが、めげずに恋を実らせるロマンスが多い。それが僕の琴線に触れる。真に迫る表情を見る度に「この人は本当に、実直な人なんだ!」と感じ入ってしまう。

洪金寶作品から派生し、邵氏兄弟の名作や、星爺の最新作などに辿り着いた。洪金寶作品とに出会わなければ、中華圏の文化と歴史に興味を持つこともなかった。自身の根源であるアジア圏が「近くて遠い」ことに気がついたのだ。

一言に「香港電影」と言っても、そこには深い文化的背景がある。大衆文化に根ざす電影作品が、誰にでもわかりやすく紐解いてくれる故事逸話。興味深い史実を次々と学ぶことが出来る。僕にとって洪金寶は、自分自身の視野を拡げてくれた先生だ。学生時代、まったく興味がなかった歴史、漢文。香港電影のおかげで、それが僕の Entertainment のひとつとなった。

武俠片で中国故事に関心を持ち、中華圏への Negative な刷り込みも偏見も拭いさった。現在を、過去を、体感したい。僕は香港電影を話題に、積極的に中華圏の仲間に話しかけている。銀幕の向こう側にいる恩師、洪金寶が僕に与えた影響は強い。

日本でのテレビ放映題は「燃えよデブゴン3」

本作の日本におけるテレビ放映題は「燃えよデブゴン3」である。映画の内容と無関係だ。さらに DVD では「カエル拳」という映画に存在しない内容まで付与されてしまった。幻覚や妄想抱える類の病いを患っている人達は、映画の改題に励むのではなく、まずは通院して欲しい。Amazon.co.jp に掲載されている Video Insider Japan Review というものも胡散臭い。

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