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邊城浪子

張徹一門の血脈を継ぐ。

古龍《邊城浪子》の主役を『傅紅雪』に脚色。血に塗れた孤高の英雄を演じるのは47歳の狄龍。袁詠儀と張智霖の馴れ初めとなった記念作。袁潔瑩が出演!張徹作品において劇伴を手掛けた作曲家、陳勳奇が導演・編劇・監製・準主演。

《邊城浪子》DVD
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  • 導演/監製:陳勳奇
  • 編劇
    陳勳奇
    周振榮
    李炳光
  • 動作設計
    馮克安
    寇占文
    祝力強
    崔亞輝
    鄭春雨
    任智剛
    鞏立峰
    寧軍
    聶軍
    黎應就
    呂燕
  • 攝影:吳榮杰
  • 配樂:Roel A. Garcia
  • 領銜主演
    狄龍 … 傅紅雪
    陳勳奇 … 葉開
    袁潔瑩 … 馬芳鈴
    袁詠儀 … 丁靈琳
  • 主演
    張智霖 … 路小佳
    陳玉蓮 … 沈三娘
    羅家良 … 慕容明珠
    馮克安 … 蕭別離
  • 出品
    勳奇電影
    龍祥影業
    龍祥電影製作股份
  • 日期:1993年10月28日
  • 片長:108分
  • 日本版
    英雄剣
    ARC 2012年10月26日 DVD
  • English title: A Warrior’s Tragedy

傅紅雪・葉開

金庸、梁羽生と並ぶ三大家のひとり、古龍による小説《邊城浪子》の主人公を『傅紅雪』に脚色しての電影化作品。物語は「關東萬馬堂」の堂主『馬空群』と、魔教公主『花白鳳』の謀略により殺された『白天羽』に端をなす。

絶対的英雄として物語の中心に立つ傅紅雪は、殺された父、白天羽の仇討ちという「宿命を負わされた」剣士。母親の復讐の念に突き動かされ、屍の山を踏み越える。序盤における、降りしきる豪雪を紅く染める血闘、それが名の由来となっているに違いない。この時、癒えぬ傷を負い、右脚を引き摺るようになる。

剣のみを信じ、剣を片時も離さず、復讐を妨げる者はすべて切り捨てる。人殺しゆえ、愛は胸の奥に閉じ込めたのだ。憂いを帯びた眼差し、血に塗れた孤高の英雄である傅紅雪は、渋味を増した狄龍の魅力が存分に発揮された適役と言える。狄龍は当時47歳、大俳優たる威厳と貫禄に満ちている。

《邊城浪子》傅紅雪
狄龍《傅紅雪》
《邊城浪子》葉開與傅紅雪
陳勳奇《葉開》與傅紅雪

陳勳奇が好演する謎多き自由人『葉開』は、原作における本来の主人公。冗談好きで軟派だが、芯は強く、戦いに際しては普段と真逆の迫力を見せる。恐るべき武術の達人だ。忍者の元で修行していた時期があり、輕功や隠密行動にも優れ、紅葉のような型の小李飛刀を愛用する。《小李飛刀系列之二》とされる原作だけに、主人公の象徴たる武器だ。

傅紅雪の対局の性格と言える、陽気で破天荒な葉開については、残念ながら多くは語れない。狄龍と陳勳奇のやりとりも非常に心地良いので、是非とも映画を見て欲しい!

袁潔瑩

開心少女組から実力派女優へと変貌した袁潔瑩は、当時24歳。美少女の童顔はそのままに大人の色気を醸し出す。古装姿だと、なおさら「高貴な姫君」という面が強調される。彼女がそこにいるだけで、作品の魅力が倍増する。

怨敵、馬空群の娘『馬芳鈴』を演じており、なんと馬術も披露!香港電影のことだ Wire fu も吹き替えなしの本人によるものだろう…派手な怪我がなくて良かった。やんちゃな少女が定番役だった開心少女組時代とは確実に違う。

《邊城浪子》馬芳鈴
袁潔瑩《馬芳鈴》
《邊城浪子》葉開・馬芳鈴・丁靈琳
葉開與馬芳鈴・袁詠儀《丁靈琳》

本作には、幾つか問題となる場面がある。まず、葉開のくちづけだ。熱烈な「迷」の多い袁潔瑩。公開当時、野郎どもは陳勳奇に憤懣やる方ない想いを抱いたはず。僕に至っては殺気を発していたと思われる…これは職権濫用。葉開の性格描写の一端?認めません。

もうひとつ。『路小佳』が自分の背中を流させるため、馬芳鈴の顔にタオルを投げつけたのだ。その実、この男も侠気溢れる英雄のひとりであったが…女神に対する無礼の数々が彼の死を早めたのである。

張智霖袁詠儀の丈夫である。この時、既に恋愛関係にあったはず。それだけに、なおさらこの態度が許せないというか…僕が、大人気俳優であるにも関わらず、彼にまるで興味を持てないのは、これが底辺にあるからかも知れない。

張智霖・袁詠儀夫婦

袁詠儀引用:袁詠儀 – 新魁文章網

壹讀によると、袁詠儀は、本作がきっかけで張智霖と知り合ったそうだ。《邊城浪子張智霖介紹 因戲與袁詠儀結緣 – 壹讀》共演場面こそないが、張智霖・袁詠儀の夫婦が揃って出演している作品は珍しいかも知れない。

この当時、21歳。デビュー1年の新人だった袁詠儀だが、既に素晴らしい演技力。可愛いだけではない実力派だ。香港電影の女優陣は、おしなべて才色兼備なのである。

彼女が喜劇的に演じる、葉開の愛人『丁靈琳』は花白鳳の姪であり、間抜けな素振りをしながらも、随所に武術の達人の片鱗を覗かせる。

また、傅紅雪との関わりも見どころのひとつ。原作が練りこまれているだけに、登場人物達の入り組んだ相関が明らかとなり、張り巡らされた伏線が紐解かれる展開は、実に見事。

袁詠儀は喜劇的な立ち回りが実に上手い。平気で変顔するのも可愛らしい。自然体なところは張曼玉と似ており「下町気質」溢れる人柄も人気の所以だろう。

小龍女・電視王

劉德華與陳玉蓮《神鵰俠侶 》1983引用:83版「小龍女」陳玉蓮現身 – 阿波羅新聞網

大した活躍はないが、なにげに華仔版《神鵰俠侶》の小龍女である、陳玉蓮も出演している。昨今の現状を伝えた記事を見ると…色々と衝撃的過ぎる。思い出は、いつまでも1983年のままで良い。それにしても、華仔の目張りが濃い。

羅家良は《電視王》の異名を持つ。電視劇、つまり TV series で数多の主演作を持つ俳優だ。僕が他に知っている出演作は《三岔口》だけだが、香港では誰もが知る存在。そして、馮克安は奇人役が良く似合う。『蕭別離』についても多くは語れないが、とにかく想像を超える動きを見せる登場人物。

配樂

《拳擊》DVD
張徹《拳擊》1971

導演・編劇・監製・準主演をこなす陳勳奇は、邵氏兄弟の黄金時代、とりわけ張徹作品の配樂を手がけている。いわば彼も張徹一門だ。

本作には多分に張徹導演の影響が見える。なんと言っても狄龍が主演。ゆえに「血脈を継ぐ」と表現出来る。

邵氏兄弟時代は知らずとも《重慶森林》など王家衛作品を知っている方は多いだろう。その多くの劇伴は、陳勳奇と Roel A. Garcia の作曲である。例えば《墮落天使》は第十五屆香港電影金像獎最佳原創音樂を受賞している。

Il mio nome è Nessuno

余談だが《出閘虎》において高飛が登場する場面に必ず Ennio Morricone 作曲の、あの有名極まる Il mio nome è Nessuno の主題曲が流れるのだ。まったくの予想外、なぜ!?僕は熱烈な Bud e Terence ファンでもある。この曲が流用された経緯が気になって仕方がない…

陳勳奇が劇伴を作曲した主な作品

導演 影片 邦題
1971 張徹 拳擊 フィストバトル 拳撃
1971 張徹 新獨臂刀 新・片腕必殺剣
1972 鄭昌和 天下第一拳 キング・ボクサー 大逆転
1973 張徹 刺馬 ブラッド・ブラザース 刺馬
1974 張徹 少林五祖 続・少林寺列伝
1975 張徹 洪拳小子 ヒーロー・オブ・クンフー 裸足の洪家拳
1975 華山 中國超人 中国超人インフラマン
1975 張徹 馬哥波羅 カンフー東方見聞録
1976 張徹 少林寺 少林寺列伝
1976 張徹 蔡李佛小子 ヒーロー・オブ・カンフー 蔡李仏拳
1976 王羽 獨臂拳王大破血滴子 片腕カンフー対空とぶギロチン
1976 張徹 方世玉與胡惠乾 続・嵐を呼ぶドラゴン
1977 張徹 唐人街小子 ヒーロー・オブ・カンフー 猛龍唐人拳
1978 張徹 五毒 五毒拳
1978 劉家良 螳螂 ※名義:陳永煌 激突!蟷螂拳
1978 麥嘉 老虎田雞 燃えよデブゴン3 カエル拳対カニ拳
1978 羅維 拳精 拳精
1978 張徹 南少林與北少林 南少林寺 vs 北少林寺
1978 劉家良 少林三十六房 少林寺三十六房
1979 張森 出閘虎 タイガー&タイガー 猛虎激突
1980 洪金寶 鬼打鬼 妖術秘伝・鬼打鬼
1980 成龍 師弟出馬 ヤングマスター

日本版 DVD

《邊城浪子》日版DVD封面含義不明《邊城浪子》日版DVD

この素性が怪しすぎる販社は《喜劇之王》の重版 DVD も出していた気がする…あの最悪な品質の Master も、まず間違いなく海賊版 VCD だ。

なぜ香港版 DVD cover を流用しないのか?余りにも残念な代物だ。映画というより、モンゴルの大自然を記録した映像かなんかに見える。俳優の顔が誰一人見えない。原題の記載もない。この Package は販促を拒んでいる…なにがやりたんだコラ!

表紙に恥ずかしげもなく記載された妄言や捏造題。すべて黙殺するしかない。下手の横好きも、ここまで度が過ぎれば、作品に対する嫌がらせでしかない。

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