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中華戰士

25歳の楊紫瓊が一騎当千の大暴れ!

話題作となった《皇家戰士》と《鐵甲無敵瑪利亞》の間に挟まれ埋没したが、楊紫瓊の美貌と Hardcore な動作、意外なゲストなど充分楽しめる。ただし、共産志向が前面に出ており、荒唐無稽な抗日ドラマの体裁や「羅莽の台詞が一言しかなかった」という過ちで黒歴史化した感はある。副導演には杜琪峰の名も。

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羅莽の台詞が一言しかなかった件。

羅莽
羅莽

『松井大佐』の側近として、圧倒的な威圧感を醸し出す、我らが羅莽。主役を喰わんばかりの存在感である。しかし、台詞は一言のみ。至高の武術を披露する場面も皆無に等しく、完膚なきまでの端役であった。役名すらない。何かの罰ゲームだろうか。単に、友情出演的なものだったのか。

武術の達人を揃えながら「コスプレしかさせない」という謎の挑戦。

動作設計も担当している馮克安は日本人役で出演。詰め襟の学生服を来て、七三分け。この変態的なコスプレも何かの罰ゲームか。動作設計ついでの出演だったのだろう、序盤であっさり退場した。黃正利は羅莽よりも活躍するが、得意の足技を遺憾なく披露したとは言い難い。

荒唐無稽な設定と前後を話題作に挟まれたことが仇となったか。

《皇家戰士》日版VHS
《皇家戰士》日版VHS

「德寶電影公司」は岑建勳が創立した製作会社。1985~1992年までの7年間活動した。本作は、岑建勳がプロデュース、鍾志文が監督、曾謹昌が脚本、楊紫瓊が主演という組み合わせによる《皇家戰士》の後続作。

前作は真田広之を主演に日本市場を視野に入れた。そして、本作は大陸市場を睨んでいる。しかし、安易な抗日ドラマに仕立てたのはいただけない。

この翌年「德寶電影公司」は電影史に名を残す《鐵甲無敵瑪利亞》を公開。本作は、前後を話題作に挟まれ埋没してしまった感が強い。

1997年以降、制作陣は自分たちの政治的無関心を恥じたことだろう。本作は、世界の楊紫瓊主演作ながら情報が薄く、メディアの流通も悪い。現在では黒歴史化しているのかも知れない。

楊紫瓊の独創的かつ Hardcore なアクションは充実!

モデルと見まごう美貌を誇りながらも、武術の鋭さ、激しさは女性を完全に超越。まさしく Heroine たるべくして Heroine となった世紀の武俠女星、楊紫瓊。

やたらと可愛い『霍明明』はセミロングヘアーの男勝り、腕が立つ!序盤での、鞭やロープを使った超高難度の格闘。そして終盤の、銃剣を携えた大群を己の身体ひとつで蹴散らす「一騎当千」の大暴れは、本作最大の見どころ。

1930年代、日中戦争付近のブータンが舞台。

楊紫瓊の演じる主人公『霍明明』は中国政府の命を受け、ブータンの『卡耳城』を武力制圧した大日本帝国軍から、城主『尤達』を救出する。そして、ブータンの仲間と手を組んで毒ガス工場建設計画を阻止する。

大日本帝国のブータン侵攻は、当然史実などではなく「大東亜」の延長に起こり得たという創作。陳腐なので無視して良い。『卡耳城(卡爾城)』も架空の存在だと思われる。

基本的には希望溢れる前向きな脚本で、悲壮感はない。さっぱりとした万人向けの痛快活劇に仕上がっており、平和的な結末には安堵感がある。荒唐無稽な設定ではあるものの、日本を怨敵と設定した影片において、日本側にも救いが残される結末は非常に珍しい。

特別ゲストと個性的な俳優陣。

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黃泰來《如來神掌》1982

特別ゲストの目玉、松井哲也が日本帝国軍の『松井大佐』を演じる。「仮面ライダーBLACK RX」でダスマダーことクライシス皇帝を演じた、あの男である。日本が誇る達人、倉田保昭のお弟子さんである。松井哲也は、当然と言えば当然だが、吹き替えなしで流暢な粵語を話している。

現在となっては、爾冬陞のゲスト出演はかなり特別。城主『尤達』の救出任務を帯びたスパイ『天字第一號』役を演じている。目立つ活躍こそないが、楊紫瓊との共演は珍しい。

爾冬陞は、梁朝偉の出世作、ご存知《人民英雄》や、初の最佳導演を獲獎した《旺角黑夜》の導演として有名。70年年代から80年代前半には《如來神掌》などの主演作がある。

『霍明明』の父親役には、数多の邵氏兄弟作品で、悪の大物を務めた谷峰。意外にも善人だった。そして、劉芊蒂がめちゃくちゃ可愛い!彼女の情報は非常に少ないのだが、近年では《奪命金》に名前がある。電視劇やテレビCMが主体の女優なのかも知れない。

吳耀漢の Spaghetti Western 的な立ち回り。

奇謀妙計五福星》などで一般にも認知度が高い、吳耀漢。演じるのは、テンガロンハットをかぶった名前不詳の風来坊。Paulina Wong という謎の女性名があるようだが劇中での呼称はない。国家が飛ばした大切な伝書鳩を焼き鳥にして食ってしまったり、賭博でイカサマをやらかして大騒ぎを起こしたり、と Spaghetti Western を連想させる立ち回りが見られる。

本作は全編に渡り、たどたどしい日本語が聞かれる。とりわけ大日本帝国軍指揮官たちの「ばか!」という叫びは印象的。劇中の日本人は、こぞって部下を罵倒し、奴隷のように扱うのだ。パワハラが問題となる現代社会を鑑みれば、あながち誇張とも言えない、この高圧的姿勢。他国から見れば Hyperphrenia 精神疾患としか思えないだろう。吳耀漢の「ばかやろう!やろうやろう!」が愉快。

視点は個から全体へ、色濃い共産志向。

序盤は『霍明明』が突き抜けた英雄として描写されるが、終盤に近づくにつれ、視点は『霍明明』という「個」から、中国側の英雄五名「全体」へと移っていく。そのため主人公への感情移入が霧散する格好となり、カタルシスは薄い。

なんと言っても、これだけの武術の実力派が揃ったのだから、楊紫瓊と羅莽、爾冬陞と羅莽、または黃正利と羅莽、といった一騎打ちがあって良かった。せめて『松井大佐』と『霍明明』の一騎打ちで幕を閉じて欲しかった。

監督、鍾志文の専門は撮影。

鍾志文は監督より、カメラマンとして参加している作品の方が圧倒的に多い。専門は撮影だ。そのため、全編に渡ってカメラワークが良い。序盤には複葉機二台の空撮がある。ところどころにラジコン模型を交えつつも、撮影へのこだわりが垣間見える。

中盤以降は集団による乱戦が主体となるが、迫力を一画面に凝縮した見事なカット割りの連続で、小気味よい「流れ」を作り出している。演出面でも、銃撃や爆風、カースタントを交えた戦闘の随所に「武術」が差し込まれているので、港産動作片らしい「躍動感」がある。銃撃戦や爆発エフェクトに終始する展開はないので安心。

脚本家、曾謹昌。

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周星馳/李力持《食神》1996

曾謹昌は星爺の右腕と言える脚本家。僕のお気にい入り影片《食神》より共作が始まり《喜劇之王》という名作を手掛けた。反面、世界的に有名な《少林足球》《功夫》は Promotion による成功が大きいように感じる。余談だが 90s 香港で日本文化の流行が起きた際、電視劇の世界でちょっとした悩みがあったようだ。曾謹昌曰く:

若者たちは、ドラマでピアノを弾けば Shine のパクリだと言う。役者を美男美女で固めれば『世紀末の詩』のパクリだと言う。年上の女性と若い男の恋愛劇なら『ロングバケーション』のパクリだと言う。でも、それは違う。

引用:日本流行文化與香港 – 吳偉明 – Google Books

例に挙がった作品がマニアックすぎて付いていけないが…時流に乗せた一過性の Junk 的ドラマや映画は、どこの国にもある。それが流行してしまうことが情けないのだ。

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