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西遊・降魔篇

この作品が、現代アジア圏で多くの人に届くことは、ひとつの希望だ。

仏教という繊細な主題を中国で扱うにあたり、万人に愛される「西遊記」を基盤としたところに周星馳監督の鋭さがある。古典大衆娯楽は、平易な表現の内に、根源的な人間の有り様を示唆する。童謡や落語、それは温故知新そのものだ。難解な教えも、笑いと涙の大衆娯楽にして、わかりやすく伝えてくれる偉人、周星馳。玄奘三蔵が足りないものを見つけたように、僕らもそれを見つけることが出来る。

《西遊・降魔篇》海報

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  • 導演:周星馳/郭子健
  • 編劇
    周星馳
    郭子健
    霍昕
    王芸
    馮志強
    盧正雨
    李尚正
    江玉儀
  • 動作設計:谷軒昭
  • 監製
    周星馳
    王中磊
    江玉儀
    張大軍
  • 攝影:蔡崇輝/高虎
  • 配樂:黃英華
  • 領銜主演
    舒淇 … 段小姐
    文章 … 玄奘
    黃渤 … 孫悟空
    羅志祥 … 空虛公子
  • 出演
    李尚正 … 沙僧
    陳炳強 … 豬妖
    行宇 … 北斗五形拳
  • 出品:華誼兄弟/比高集團
  • 日期:2013年02月07日
  • 片長:110分
  • 日本版
    西遊記〜はじまりのはじまり〜
    Happinet 2015年05月02日 Blu-ray
  • 英題:Journey to the West: Conquering the Demons

仏教の愛を主題とする本作が「中国で空前のヒット作となった」その意義は甚大。

《西遊・降魔篇》日版 Blu-ray
《西遊・降魔篇》日版 Blu-ray

既に、諸賢の贔屓となっている作品であろうから、多くは語るまじ。僕は2014年11月29日、父親と一緒に「角川シネマ新宿」にて字幕版を鑑賞して来た。父と劇場に行くのは、恐らく《A計劃》(1983年 プロジェクトA)以来。実に30年強ぶりに親子での映画鑑賞となった。

74歳になる僕の父は、米国西部劇をたまに見ているが、香港電影においては、かろうじて成龍や李小龍の名を知っているくらい。漫画は読まず、もっぱら英文のビジネス・経済書と剣客小説。テレビドラマは一切見ない。

そんな父が、周星馳監督に興味を持ったきっかけは、2014年11月25日の日本経済新聞夕刊「チャウ・シンチーさん『西遊記』を監督」という記事だった。

日経の一面で紹介されるほど話題になっている映画監督、そして夢溢れる西遊記。父は「これは見てみたい!」と、自ら劇場にチケットを買いに行った。数十年ぶりの映画鑑賞だという。

海外を飛び回って来た父は、香港を何度も訪れている。中国と台湾、そして中国と香港。容易に語ることは出来ない状況下で、香港の人である周星馳監督が何を訴えるのか?

パンフレットの監督インタビューによると、続編は2016年に撮影完了予定!

映画を見終わった父は「続きはいつ見られるのか?」と聞いてきた。僕は「あくまで、西遊記がはじまる前を描いた作品だから、続きはないよ。」と返した。香港電影には《水滸伝》《倚天屠龍記》といった大作の一部だけを抜き出して映画化した作品が多く存在するので「未完」であることも常識であったからだ。

しかし、帰宅後にパンフレットの周星馳監督インタビューをじっくり読むと、なんと2016年に続編の撮影が完了予定だという。2017年には、また親子で劇場に行くことになる!

剥奪するのではなく、愛に導く。痛みを知ることで悟る愛。

西遊記をモチーフとしていなければ、中国での公開において、脚本に規制がかかったのではないか?仏教の愛を主題とする本作が「中国で空前のヒット作となった」その意義は甚大。それが僕らの感想であった。

仏教という繊細な主題、それを現代中国で扱うにあたり、万人に受け入れられる「西遊記」を基盤としたところに、周星馳監督の鋭さがある。殺生、剥奪ではなく、愛に導く。劇中の玄奘三蔵が足りないものを見つけたように、僕らも見つけることが出来る。

『執心を知ってはじめて、執心をなくすことが出来る』痛みを知ることで、愛を知る。現代大衆娯楽、漫画、ゲームなどが「人が死なない殺人行為」「血の流れない暴力」で、ひた隠しにしている「痛み」そして「痛みを知ることで悟る愛」いつの間にか、誰も教えなくなった本当に大切なこと。古典大衆娯楽は、平易な表現の内に、根源的な人間の有り様を示唆してくれる。童謡や落語、それは温故知新そのものだ。

アジアに生きる僕らにとって、今だからこそ超ヒット作になって欲しい。

この作品が、現代のアジア圏で多くの人の心に届くことは、ひとつの希望だ。著名人が良いと言うから、大ヒット作だから、なんて余計な「詮索」は入れずに映画を見ると良い。溢れ出す、周星馳監督の「友愛」という熱い想いが、なによりも激しく、強く胸を打つ。感極まって泣いてしまう!

周星馳監督を改めて尊敬します。どんなに難解な教えも、笑いと涙の大衆娯楽にして、わかりやすく伝えてくれる。無厘頭とロマンスを織り交ぜた童謡は、国境を超えて愛される。

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Kazu Spara in 25 May 2017
Kazu Spara