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龍虎鬥

戦後の疵が鮮明に残っていた時代の空前のヒット作!

若干27歳の初監督にしてアジアを制した王羽。『雷明』の闘いは、戯曲化された現実だ。当時の映画を見る人々の心に強く残っていた戦争、そして王羽が勧善懲悪を体現した。現代の電影に継承される「燃える魂」その発火点!

《龍虎鬥》DVD

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  • 導演/編劇:王羽
  • 動作設計:唐佳
  • 監製:邵仁枚
  • 攝影:華山
  • 配樂:王福齡/王居仁
  • 領銜主演
    王羽 … 雷明
    汪萍飾 … 小玲
  • 出演
    羅烈 … 北島
    董力 … 鹿村
    趙雄 … 刁二
    王鐘 … 田中
    王青 … 久米
    房勉 … 李中海
    鄭偉 … 大龍
  • 出品:邵氏兄弟
  • 日期:1970年11月27日
  • 片長:90分
  • 日本版
    吼えろ!ドラゴン 起て!ジャガー(どういう意味?)
    Paramount Japan 2013年09月13日 Blu-ray
  • 英題:The Chinese Boxer

空前のヒットの理由、それは戦後の現実が還元された「勧善懲悪」劇だったからだ。

王羽の主演作を見て来た方なら、誰もが感じるであろう。王羽は国境を超えた世紀のカリスマである。王羽が画面に映った瞬間から「最高潮」が始まるのだ!王羽自身が初監督・脚本を務めた本作において、王羽が演じる主人公の名は『雷明』である。字幕ではレイ・ミンと翻訳されるが、漢字を調べれば、素晴らしく英雄然とした名前ではないか!

この《龍虎鬥》では、雷明の苦境が続く。《獨臂刀》の『方剛』や《金燕子》の『小鴨』といった超人的存在ではなく、等身大の拳法家なのだ。雷明の劣勢に、思わず拳を握りしめる場面が多々ある。王羽は無敵だ!熱く、熱く、雷明を応援しながら…胸中には複雑な想いが駆け巡る。なにせ、怨敵は日本人なのだ。

しかし、雷明が日本刀にて、悪の片棒を担ぐ素浪人どもをバッタバッタと切り落とす様は、凄まじいカタルシスを呼んだ。雷明が、僕の大好きな、いわゆる「世直し侍」と重なったのである。この瞬間、王羽がぐっと身近な英雄に感じられた。心が燃え上がる!

《獨臂刀》《獨臂刀王》《金燕子》という不朽の名作と出会って以来、王羽は僕にとって国境など遥かに超越した英雄となった。まさに「天皇巨星」だ。それだけに、日本人が仇となるのが辛く、また欧州人が悪役となれば悲しい。こうなるともう、王羽には宇宙人とでも戦ってもらうしかない…

周星馳の世代なら、その発想が大衆に受け入れられるが、本作は1970年の作品である。映画に「現実の血が流れている」時代の作品である。欧米においても、日本や旧ドイツが悪役を担う作品が、映画だけに留まらず見られた時代である。

映画を見る人々の心にまだ血が鮮明に残っていた。《龍虎鬥》がなぜ東南アジアにおいても空前の人気作となったのか?それは現実が還元された「勧善懲悪」が激烈に描き出されていたからである。「現実の怒りが凄みとなり」架空の世界に「血を通わせる」のである。雷明の闘いは「戯曲化された現実」なのだ。「重い」この作品は重い。香港電影は時として、遙かな想いを巡らせる。僕はアジア人である。

衝撃の極道空手家!

《天下第一拳》海報
鄭昌和《天下第一拳》1972

極道空手家『北島』は、後に《天下第一拳》と讃えられし男、羅烈が演じている。《金燕子》では金燕子を助け、彼女に思いを寄せる正義の武術家『韓滔』を好演していた名優が、変われば変わるものである!羅烈は 80s 以降、キワモノ役で爆発的人気を得るが、本作は、ややもすればその嚆矢と言えるのかも知れない。羅莽と共通するものがある。

最初は、別人が演じているものだとばかり思っていた。北島の初登場場面の衝撃!無愛想かつ無口で、何を考えているかまったくわからない不気味な男。しかし、他愛のないことで突如「激昂」し「奇声を上げて」暴力を振るい出す。滑稽で大袈裟に映るだろうが、これは現代社会に連綿と存在する日本の「悪しき男性像」そのものだ。まったくもって変ではない。この「北島」を笑える日本人男性は多いだろうか?

ドグサレ野郎、田中!

王鍾が演じる『田中』という空手家。田中姓の方には失礼にあたるが、日本ではありふれた苗字を持ち、一見して嫌味のない好青年だ。いわば平凡である。しかし!やることは実に「えげつない」まさに人非人である。

仁義と歴史を伝承する、正しき者が集う國術道場。その道場を悪党から守るため、自らの命を張った男気溢れる若手に対し、殺意を剥きだした田中は奇声を上げて突進。若手が危ない!と思いきや、すかさずカウンターの一撃を喰らい吹っ飛ばされる…田中よ、一丁前なのは気合だけか!?

そう思わせたのも束の間、田中は「目潰し」で一気に勝負を制したのだった…このドグサレ野郎!余りに激しい、人物と行為のギャップ。お人好しそうな青年ながら、その実、性根が腐り果てた男だったのである。その因果応報な死に様は胸がすく、と同時に、やはり複雑な想いが駆け巡るのである。あぁ、田中よ…

現代に継承される「熱き魂」その発火点は王羽!

《龍虎鬥》日版DVD
《龍虎鬥》日版DVD

《獨臂刀》当時、王羽は若干24歳。この歳で、あの演技が可能となるとは驚愕すべき才能、まごうことなき天才である。初監督・脚本である《龍虎鬥》において27歳、既にアジアを股にかける空前のヒット作を生み出してしまった…感服の至り。

数々の激闘で見せる、鬼気迫る表情、敵を焼きつくすような眼差し、業火をまとう必殺拳!己を貫く、ひたすら一本気な熱血漢。現代の香港電影作品に継承される「燃える魂」その発火点が「王羽」だ!

端役まで見逃せない!香港電影を支える面々が出演

ほんの一瞬だが敵の集団のひとりとして映る、若き日の袁信義。比較的大きく映るのは、196作もの香港電影に出演する馮克安。そして博打場の胴元を演じるのは、後の大監督袁和平だ。まだまだ僕の知らない俳優が隠れているのだろう。数年後に見返すと、新たな発見がありそうだ!

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