驅魔警察
林正英が領銜主演・動作設計・監製!新解釈による《摩登殭屍先生》
初作と三作目《靈幻先生》に並ぶ傑作!《一眉道人》から引き続き、林正英自身が手掛ける注目の作品。当然といえば当然だが「喜劇を絡めた Horror 要素・体術を駆使した動作・複雑怪奇な神具類」という《殭屍先生》ならではの特色が存分に発揮されている。殭屍先生系列の通算六作目。
肌肉電影
西協美智子、陳治良、周比利。強烈な筋肉を誇る俳優が集結。本作の大きな特徴だ。脇役まで「これでもか!」というくらい濃い。なにげに動作設計に《瘋猴》小侯が参加しているのも興味深い。
Muscle Elite 陳治良

陳治良の代表作と言えば《力王》だろうか。Malaysia 出身の筋肉王である。若き日の佐々木健介ではないことに留意したし。僕にとっては、魂の名作《廟街十二少》での卑劣漢『小飛俠』が印象深い。
眉毛未連接
林正英が演じる主人公『風叔』の初登場は、立ち小便をするチビッ子を抱え上げてからの正面顔寄り。「眉毛が繋がっていない」ことを視聴者に訴える Cut だ。もしや都会的な人物なのだろうか?しかし、性格は従来の道士と同じく「頑固一徹」かつ、恐ろしく古風である。安心である。苗僑偉が演じる巡査からの呼称は「師父」である。随所に「道士の子孫」を意識させる設定が施されているのだ。
『風叔』は CID (Criminal Investigation Department) の刑事であり「風水」を駆使した捜査を行う。そして因縁の仲である、午馬演じる署長より極秘裏に渡された秘密道具として「道教の鏡」が登場する。
個性溢れる登場人物たちによる緊張感溢れる展開の連続で、物語にぐいぐいと惹き込まれる。西協美智子が演じる、本作の仇敵「日本の美女妖術師」も強烈な印象を残す。
王美華の本業は Fashion model ではないか?
『風叔』の姪を演じる王美華が凄まじく可愛い。笑顔が抜群で張曼玉に似た表情になる時もある。彼女に関する情報はまったくと言って良いほど存在せず、経歴は定かでない。Internet で本作を検索すると、林正英よりも彼女の Capture 画像の方が多い。10頭身はある体型から推測するに、本業は Fashion model だろう。曾志偉の元妻とは別人。
世界王者・周比利

周比利の経歴は尋常ではない。1985年に WKA Kickboxing の中量級世界王者となっている。中国人では史上初かつ唯一の王者であり、2003年に45歳にして現役復帰を果たした。
本作では、顔を白塗りにした清朝宦官を連想させる「妖術師の用心棒」を演じる。まさかのオカマ。強烈な蹴りも披露。大きな活躍こそないが、視聴者の Trauma になる可能性がある。
翌年の《女機械人》では Terminator を連想させる Cyborg として登場。生首だけになって笑ったりする。極悪な Villain だ。作品自体は動作と笑いが豊富、女優陣も美人で充実した内容。むしろ Porno が蛇足というⅢ級作品。
その他、知っているところでは、午馬ともども、ご存知の名作《鼠膽龍威》に出演。歌神との素晴らしすぎる戦い、李連杰との一騎打ちは、しっかり記憶に刻まれた。世紀の愚作《冒險王》にもやられ役で出演していたが、これは僕のような金城武ファンにとっては「なかったこと」になっている。
武術指導者として著名な董瑋が監督
監督の董瑋は《龍爭虎鬥》の序盤にて、非映画ファンにも浸透している "Don’t think. Feel!" の教えを請う少年として有名。映画人としての経歴は凄まじい。本作は初監督作ながら、この完成度の高さも当然とも言える。
董瑋は武術指導者として高い評価を得ており、2002年《英雄》においても武術指導を担当している。この作品も有名なので、誰もがご存知だろう。僕はこれ、見ていない。殭屍先生系列では、三作目《靈幻先生》の武術指導を担当。
林俊賢

林俊賢は、90年代初頭まで劉嘉玲と交際していたという、実に羨ましい二枚目俳優。無綫電視藝員訓練班の第11期であり、なんと同期は梁朝偉、星爺、そして吳鎮宇といった凄まじい面々。
1988年から俳優兼歌手として活動し、1995年に休業。永い空白期間を経て、2014年から俳優業を再開した模様。本作と同年の《血洗洪花亭》では、さっぱり煮え切らない警官を演じている。
苗僑偉は競争馬《牧場王》の所有者だった。
苗僑偉は無綫電視藝員訓練班第9期生。80年代には、華仔と梁朝偉を筆頭とするアイドル俳優グループ《無綫五虎将》で爆発的な人気を得た。《香港賽馬會》の会員であった時期には、なんと《牧場王》という名前の馬の所有者であったという…すんのかい、せんのかい。
日本版 DVD の広告詐欺

「香港・日本合作」という捏造。これ、広告詐欺にはならいのだろうか?本作は「純粋な香港電影」である。西協美智子が大役で出演しているのは確かだが、映画の Credits に日本企業の登記はない。
「芒に月」を背景に道士が座っている Cover も作品内容とは無関係。捏造に次ぐ、捏造である。ついでに捏造題は新・霊幻道士となっているが《新殭屍先生》は劉觀偉導演作品で既に存在している。
Video Games 産業においては、米国に LJN が、日本にタカラゴミーがあるように、日本映像媒体産業には彩プロが君臨しているのだ。
日本販社は改竄・捏造行為で消費者を騙す。
米国なら、多くの零細日本販社は悪質業者認定が確定する。中華圏の友達も、邦題と原題の乖離に驚くことが多々ある。中古店で香港電影の日本版 DVD を発見しても Smartphone で情報検索しなければ何の作品だかわからない。
とにかく珍妙な邦題に改竄される上に「Package 違い」という罠も仕込まれている。おかげで僕は同じ作品を買ってしまったことが幾度かある。
製品内容と異なる宣伝文句など言語道断。例えば、客演に過ぎない有名俳優を、あたかも主演のように見せかける。これは当然ながら消費者に対する詐欺だ。それ故に Hollywood は原題改竄を不可とし Poster, DVD cover の品質管理を徹底し始めたのである。
日本販社に自浄作用はない。
日本が開国して、どれだけの年月を経ているというのか。いつまで外国の手が入らなければ自浄出来ない環境であり続けるのか。映画作品を単なる金儲けの道具と見做し Creator への尊敬心の欠片もない販社が、そこらに転がっている。こいつらは金さえ入れば売り物は何だって良いのだ。たまたま取り扱う商品が映画作品だっただけなのだ。
香港電影においては、2014年辺りより僅かながら DVD cover に原題を併記してくれる日本販社が現れた。Italia 映画、とりわけ Spaghetti Western は各位の働きかけで大幅改善されている。希望は捨てずにいたい。